「自分にしかできない仕事が多すぎる…」って思ってませんか?その仕事、8割は自分がやらなくてもいい仕事です。 - mediator

Blog 「自分にしかできない仕事が多すぎる…」って思ってませんか?その仕事、8割は自分がやらなくてもいい仕事です。

2019年10月03日 (木)

インタビュー
「自分にしかできない仕事が多すぎる…」って思ってませんか?その仕事、8割は自分がやらなくてもいい仕事です。のメイン画像

人が入れ替わるたび、毎回同じことを教えなくてはならない。AさんとBさんでアウトプットの品質が違う。部下からの部下への教育は、誰が教えたかによって差が出てしまう…。

そんな悩みやジレンマから、「教えるより自分でやってしまった方が早い」「この仕事は自分にしかできないだろう」と教えることを諦めていませんか?

今回は、自動車業界の設計・製造部門で業務改善コンサルティングを経験したのち、現在は、視覚化された標準作業手順書(ビジュアルSOP ※Standard Operating Procedures)マネジメントプラットフォーム「Teachme Biz」を提供するStudist (Thailand) Co., Ltd.代表の豆田氏から、属人的になりがちな業務の問題点や可視化、標準化を進める方法とメリットについてお話いただきました。

「本当はやらなくてもいい仕事」が8割を占めるベテランの仕事

ガンタトーン:
豆田さんは、大手自動車製造メーカーや自動車部品メーカーの業務改善コンサルタントをしていたのですね。日本の自動車メーカー大手といえば、仕組みや制度がしっかり整っていそうなイメージがありますが、コンサルティングって必要なんですか?

豆田氏:
自動車系メーカーには職人気質のベテランさんも多く、勘と経験で成り立っている工程も結構あります。何十年もその場所で働いていると、「この仕事は自分にしかできない」と思っている人も多いんですね。僕の仕事はそうした現場に入り込み、第三者視点で作業の工程や内容を可視化し、無駄を見つけて効率の良い工程に組み替える仕事だったんです。「無駄」見つけ屋さんですね(笑)。企業側としては、コスト削減や生産性の向上、リソースの最適化などが目的でした。

ガンタトーン:
なるほど。現場のベテランさんとのコミュニケーションは大変そうですね。「俺の背中を見て盗め!」といった従来の日本スタイルの教育も今の若手には合わなそうです。


豆田氏:
そうですよね。勘と経験で成り立っている仕事は属人的になりますので、ベテランさんが定年退職で辞めたときなども苦労します。色々な企業さまで業務を分析していると、実は経験を積んだベテランしか出来ない仕事は、業務全体の約1〜2割程度だったってことがありました。それ以外の8〜9割はパターン化できる作業と単純作業だったんです。

ガンタトーン:
たった1、2割ですか!では、ほとんどの仕事は新人や中堅でもできる仕事ということですか?そう言われてしまうとベテランさんの立場が…。

豆田氏:
いえいえ、そういうことではなくて、本当はやらなくてもいい仕事をベテランさんがやってるということなのです。その「本当はやらなくてもいい仕事」をやってる時間をもっと付加価値の高い仕事に当てられれば、企業の成長スピードはもっと上がってきますよね。

ガンタトーン:
確かにそうですね。でも、その「本当はやらなくてもいい仕事」をどうやって見つけるんですか?それに、「本当はやらなくてもいい仕事」を部下や後輩に教えるのはどうしたら良いのでしょうか。レクチャー会開いたり、マニュアル作ったり、考えるだけでも疲れそうです…。

豆田氏:
そうそう、ゾッとしますよね(笑)。僕も「俺はマニュアル作るために会社来てんじゃねー!」と現場のベテランさんに怒られたこともあります。

「自動化」の前に、業務の可視化→標準化→マニュアル化

豆田氏:
近年の人材不足で、設計・製造現場は「自動化」に注目していますが、オートメーションのツールを入れれば全てが解決するのでは?と思っている方も少なくありません。しかし、実は業務の自動化に向けては4つの段階を踏まなくてはいけません。それは、1. 業務の可視化、2. 標準化、3. マニュアル化、4. 自動化です。


豆田氏:
この中で最も重要なのが、最初の1. 業務の可視化です。ここは、一番手間も時間もかかりますが、ここが出来なれけば次には進めません。

1. 業務の可視化
前職でコンサルタントとして自動車メーカーに出向いていた時は、ベテラン従業員の隣でストップウォッチを持ちながら作業時間を計り、その工程を細かくメモすることから始めていました。現場作業者の業務を一通り洗い出して、長期に渡るプロジェクトの全行程を10mほどの紙の工程表にしたこともあります。プロジェクトルームの壁一面が工程表になるほどです。ここまでやって初めて、どんな作業をどのようにやっているのか?どこかに無駄はあるのか?改善できる場所はあるのか?が見えるようになります。

2. 標準化
業務の可視化が出来たら次は標準化です。人によってやり方や作業にかかる時間は異なりますし、中にはやる必要のない作業までやっている人や必要のある作業を飛ばしている人もいますよね。こうした個人による差異をQCDの観点で問題ない作業にまとめていくのが標準化です。共通のルールや手順、クオリティ、アウトプットを定義していくのです。部下から部下へ、またその部下へ…人から人へ引き継いでいる間にいつの間にかルールが変わってしまったりすることもよくあります。こういうことが起こらないよう、「迷ったらここに戻る」という先が「標準化」なのです。

3. マニュアル化
作業の標準化ができたら、次は新人でもわかるようにマニュアル化します。誰かに教わる必要がなく、誰がやっても常に同じアウトプットが出せるのであれば、そのマニュアルは非常に有効と言えるでしょう。ただ、そのために重要なことは、作業が改善されたら、マニュアルもブラッシュアップ(更新)していくことです。1回作ってそれっきり、更新もされないと、そのマニュアルはいつの間にか形骸化して誰も読まなくなります。

4. 自動化
ここまで終えて、さらに時間の効率化やアウトプットの正確性を高めたり、来たる未来の人材不足に備えることを目的に機械やロボット、システムを導入します。最近は「自動化」というワードだけが注目されがちですが、1-3のステップ無くして、4はありえません。



ガンタトーン:
なるほど。タイの製造現場でも自動化、IoT導入の波が押し寄せていますが、「自動化」の前に現場の状況をきちんと把握しなければ、どこに改善のヒントや無駄があるかわかりませんよね。僕の仕事、誰か可視化してくれないかなぁ…。

なぜ、マニュアル化をするのか?その目的を理解することが仕組み定着の鍵

ガンタトーン:
豆田さんが提供しているサービス「Teachme Biz」はこの「3. マニュアル化」の部分ですよね?タイでは転職が当たり前ですし、製造業の現場だとミャンマー人の派遣労働者が働いていたりもしますので、見ただけで誰でもできる!教えなくてもできる!というのは非常に魅力的です。

豆田氏:
Teachme Bizは、「誰でも簡単に作成できて、誰でも理解できる」がコンセプトの視覚化された標準作業手順書(ビジュアルSOP)マネジメントプラットフォームです。最近の日本では、飲食店やコンビニなどで外国人労働者も増えてきていますので、彼らのために出来るだけ分かりやすいマニュアルを作る必要があって導入をされた企業さまも多くあります。写真や動画を使って簡単にマニュアルが作れますので、現場担当者でも難なく使いこなせますよ。飲食店でステーキの焼き加減を「こんがり」と表現していた厨房では、新しく入った外国人の人にその「こんがり加減」を伝えるのに苦労していたのですが、写真や動画を使ってマニュアルを作ったことでその問題は解決されました。日本人にしかわからない言い回し、結構あるんですよね。

タイでも賃金上昇や人手不足がこれからますます課題になる一方、現場は生産性の向上や業務の効率化を求められて大変です。Teachme Bizのサービスは、そんな現場で役に立てると思っています。

ガンタトーン:
それは共感できますね。通訳の業界でも日本語の四字熟語や曖昧な言い回し、擬音語などは非常に苦労するところなのでよく分かります。人材不足で言えば、僕の会社もまさに今そうです。新人が入って来てもメンターとなる先輩社員が忙しすぎて、まさに「俺の背中を見て盗め!」的なOJTになりがちです。新人受け入れについては、一応マニュアルも作ったのですが、あまり浸透せず…(涙)。

豆田氏:
確かに、読まれる・使われるマニュアルにするのは難しいですよね。マニュアルを読まない人は「聞いた方が早い」と考えているし、聞かれた方は自分の時間を取られるので嫌ですよね。分からない時、迷った時はマニュアルを見る、という習慣を会社に定着させるためには、トップの働きかけは重要です。現場にツールを丸投げして「使ってみて」では、定着は難しいでしょう。


豆田氏:
従業員が意欲的にマニュアル作成に取り組む事例として、僕の会社では、マニュアル作成数が最も多いメンバーを”最も業務改善に取り組んだ人”として表彰しています。また、管理業務として入ったメンバーが自分の仕事をマニュアル化することで、次の新人に仕事を渡す時間が早くなり、結果としてその子は管理業務に留まることなく、もっと上の仕事に早期にステップアップすることができました。

マニュアル化は、できるだけ会社の全員が使う一般的な業務、例えば申請系の業務などから着手すると良いです。皆んながそのマニュアルを見に行くようになるので、少しづつ浸透していきます。

ぶっちゃけ、「マニュアルを作る」というのが目的なら、PPTやエクセルのチェックリストなどでもマニュアルは作れますよね(笑)。ですが、実際に運用してみると、フォーマットや書き方が作り手によってバラバラ、マニュアル数が増えるにつれて管理が雑になり、マニュアルの改善や更新も滞る、といった課題が出てきます。Teachme Bizが良い点は、フォーマットが統一されていることやマニュアル内に書かれたテキストの全てが検索対象ですので、マニュアルから調べたい作業が探しやすいといった点が挙げられます。また、どのマニュアルがどのくらい見られているか、なども分かるので、更新の優先順位もつけやすくなりますね。

ガンタトーン:
スマホアプリや動画、写真撮影に馴染んでいる今のタイ人なら、Teachme Bizのマニュアル作成はあっという間に覚えられそうですね。

豆田氏:
大切なのは「マニュアルを作る」ことではなくて、「なぜ、マニュアルを作るのか?」「なぜ、マニュアルを読むのか?」という当初の目的を従業員がちゃんと理解しているということです。仕事をマニュアル化することで、どんなメリットを得たいのか?そこを理解してもらうことが重要なのです。ガンタトーンさんは、なぜ今の会社で業務改善が必要だと感じていますか?マニュアル化を進めて業務改善が進めば、会社側にはどんなメリットがあると思いますか?

ガンタトーン:
『新人マニュアル作ったのになんで見ないの?!』『それ、この間も教えたでしょ!!なんで覚えてないの?!』と日々怒っているうちの社員のストレスが少しでも解消されれば、職場の雰囲気も穏やかに…(苦笑)。いやいや、それは冗談ですが、皆んなの仕事を少しでも効率よくして、残業しないでも仕事が終わるようにしてあげたいですね。それに、管理職層が忙しすぎて、この先の未来に向けた議論や対応がなかなかできていません。僕も含めたマネジメント層の仕事から無駄を省いて、もっとイノベーティブな時間を増やしていきたいですね。

豆田氏:
いいですね。ぜひ、この機会にTeachme Biz導入を!(笑)

ガンタトーン:
はい!見積書ください!(笑)

mediatorの画像
執筆 mediator

Related Blog 関連ブログ

mediator newsletter

「mediator newsletter」は、日本とタイの最新情報をお届けするメールマガジンです。 ぜひ、タイでのビジネスにお役立てください。 購読をご希望の方は、右記よりご登録ください。