COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が世界で猛威をふるっています。ヨーロッパで、タイで、日本で、米国で。地球上のすべての人々がいまCOVID-19の驚異にさらされているといっても過言ではありません。
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この世界規模の大きな災厄を前に、メディエーターはどのように動き、どのような方向に変わろうとしているのか。そして、タイや日本の企業やビジネスはどのような影響を受けていくのか。今日は、僕がいま感じていることをストレートにお伝えしたいと思います。それが日タイのさらなる関係強化になることを祈って–。
在宅勤務が始まった
タイ政府による非常事態宣言を受けて、メディエーターも3月23日(月)から在宅勤務体制に移行しました。
忘れもしません。その3日前の3月20日金曜日。僕たちは定例のマンスリーミーティングを実施していました。在宅勤務へのシフトを想定して情報収集は進めていたものの、すぐに在宅勤務に入るとは予想していなかったので、皆でチームビルディングのゲームをして、その後、食事に行ったのです。そして翌日の土曜日に、スーパーマーケット以外の商業施設の休業が決まりました。
これはまずい。いますぐに在宅勤務の準備をすぐに整えなければーー。
そう思った僕は、23日の午前中に全員にオフィスに集まってもらい、在宅勤務に必要な情報や備品を提供しました。デザイナーには仕事上、大きなモニターが必要です。それを自宅に持って帰るためのタクシー代も負担しました。
その日以降、全員がオフラインで集まる機会は消滅しました。もちろん食事会もゼロ。全員と顔を合わせ、声を聞ける機会はオンラインのみです。
ロジカルな評価が問われる
在宅勤務がスタートしてから早1ヶ月。まずは、僕のいまの状況をお伝えしましょう。
スケジュールをぎっしりと詰め込んでいるので、実は全然休みがありません。オフィスで働いていたときよりも仕事をしている感覚です。
これは僕だけではありません。スタッフからも「前よりも仕事をがっちりとしているので、ストレスがたまる」という声があがっています。スケジュール管理や適切な仕事量については、これから随時考えて、軌道修正していく必要があるようです。
ただし、皆とつながっているという感覚はしっかりとあります。毎朝9時には全員揃ってオンライン朝礼をやっていますし、終礼も実施しています。前々から朝礼や終礼は取り入れたいと思っていたので、良い機会になりましたが(笑)、これからはアウトプットでスタッフを管理していかなければなりません。
勤務時間や勤務態度ではなく、どれだけのアウトプットがあるのか。どんな成果をあげているのか。目標にどれだけ近づいているのか。ロジカルな評価が問われています。
プロセスで人材を管理する手法を取ってきた日本企業はこれが一番、苦手かもしれません。でも、すべての企業がいま変わる必要があるのです。
いま借りているオフィスにスタッフ一同が集まる機会はなくなりましたが、僕としてはオフィスを縮小するつもりはありません。むしろ、100人分、200人分広げる方向性に持っていきたい。ただし、この人数にはフリーランスや他社のスタッフも含まれます。
仕事に応じて、ケースに応じて、人が柔軟につながることができる関係を作り、それを受容できるオフィスは維持していきたいと考えています。
リモートワークのデメリット
オフライン時よりも働いているとお話しましたが、在宅勤務やリモートワークにはその他にもデメリットがあります。
同じ場所、同じ空間で同じ時間を過ごすことにより、文化や風習、作法、価値観は形成されます。赤ちゃんがそうですよね。家族と同じ空間で育てられることで、その家庭独自の文化や習慣、雰囲気といったものを身につけていく。
でも、遠隔ではそれがかないません。周囲を「見て習う」機会が減ってしまえば、統一感が取れなくなり、会社でいえば「社風」のようなものが希薄になってしまう。そんな危機感を覚えています。ちょっと寂しいことですが…。
人材採用については、ある程度スキルのある人材を取らざるを得ないでしょう。遠隔では人材教育がままならないからです。
採用基準も明確になっていくはずです。どのようなコアバリューを求め、どんなスキルを必要としているのか。企業はそれらを明らかにし、オンラインでアセスメントを受けてもらう。それが当たり前になっていく気がしています。
なんとなくうまが合いそう、自社の雰囲気にマッチしそうといった「相性」をオンラインで測ることは容易ではありません。人材採用はよりロジカルにならざるを得ないと思うのです。
さきほど、COVID-19以降、企業はロジカルに従業員を評価していく必要があると述べましたが、人材採用についても同様です。ロジカルな採用基準を苦手とする日本企業が変わるきっかけになるかもしれません。
駐在員が日本人である必要があるのか!?
COVID-19を機に、日本人駐在員の役割についてもいろいろと考えるようになりました。
忌憚なくいえば、これまでの日本人駐在員の大きな役割は、日本との窓口でした。語学を苦手とし、英語ができない日本側の窓口として機能していた側面が強かったように思います。
しかし、これからは「本社のための駐在員」は減っていくでしょう。
オンラインでの業務が一般化すれば、仕事の多くは本社からのリモートでやりくりできるようになる。別にわざわざタイにいる必要はない。そうなれば、コストも一気に抑えられます。
ただし、要らなくなるのは「本社のための駐在員」であり、「現地のための駐在員」は必要です。現地法人の従業員をまとめ、コントロールし、目指すべき目標に向けて会社を導いていくことのできる能力を備えた人材は絶対に欠かせません。
とはいえ、その駐在員がはたして日本人である必要はあるでしょうか? タイの現地法人のために仕事をこなせる駐在員であれば、日本人でもタイ人でも、あるいは別の国の人材でも構わないはずです。
アフターCOVID-19は、資源のある国が有利だとされています。人材では、高いスキルや豊富な経験を持った人材が評価されるようになるでしょう。能力があれば国籍は問わない。そんな時代がやってきたように思うのです。