フルーツを活かす100%プレミアムな「コンフィチュール」をタイ全土へ。美味しさと健康、そして安全。タイスイーツの土壌を広げるパティシエ(ソロジさん)「私と日本」vol.18 - mediator

Blog フルーツを活かす100%プレミアムな「コンフィチュール」をタイ全土へ。美味しさと健康、そして安全。タイスイーツの土壌を広げるパティシエ(ソロジさん)「私と日本」vol.18

2021年05月05日 (水)

私と日本
フルーツを活かす100%プレミアムな「コンフィチュール」をタイ全土へ。美味しさと健康、そして安全。タイスイーツの土壌を広げるパティシエ(ソロジさん)「私と日本」vol.18のメイン画像

東京大学で勉学に励み、日本の大手メーカーでエンジニアからパティシエへ
挑戦の人 ソロジさん

東京大学で勉学に励み、日本の大手メーカーでエンジニアとして順風満帆な道を歩んでいたソロジさんが一転、パティシエ転身を決意したのは30歳を過ぎた頃。本格的に製菓技術を学びたいと日本へ飛び、2015年に“100%プレミアム”を掲げたコンフィチュール専門店「The Confiture」をスタートさせた。フルーツを中心に、厳選された食材を用いた色とりどりの煌めくコンフィチュールは、ソロジさんの挑戦と信念の結晶だった。 遅くはない。エンジニアからパティシエの道へ。

バンコクの中心部から車を40分ほど走らせ、大通りから1本道を入ったところに現れる閑静な住宅街。その一角に、柔らかなクリーム色とフレンチスタイルの外観が目を引く「The Confiture」はある。 お店と言ってもイートインスペースはなく、店舗とオンライン販売がメイン。棚にはフレッシュな青果物を使った鮮やかなコンフィチュールがひと際輝きを放ち、ショーケースにはフィナンシェやタルト、クッキーといった焼き菓子が並んでいる。

そこでオーナー兼パティシエとして腕を振るうのが、異色の経歴を持つソロジさん。日本の最先端技術とものづくりに興味を抱き、東京大学・理工学部に入学。さらに同大学院へと進み、研究を続けたソロジさんは大学院修了後、日本の大手メーカーにエンジニアとして就職した。一体どのように、そこからパティシエへと舵を切ったのか。

「エンジニアとして日本で5年、その後タイの日系メーカーで5年ほど働いていたのですが、もともと大好きだったスイーツを通して多くの人を幸せにしたいという気持ちがどんどん強まり、後悔したくないと仕事を辞めたんです。安定した職を手放すなんてもったいないと思う人もいるかもしれませんが、私は挑戦したかった。そうして、日本文化に触れながら洋菓子技術を学べる日本の製菓学校の門を叩きました」。

素材の味を活かした“美味しくて優しいコンフィチュール”

専門学校で製菓全般に関わる基本技術を学んだソロジさんは卒業後、神戸の有名洋菓子専門店で修行を積み、念願だった自身の店をオープン。それが冒頭でも少し登場した、タイをはじめ日本や欧州のフレッシュな青果物を使った コンフィチュール専門店「The Confiture」だ。当時のタイではまだあまり知られていないコンフィチュールを選ぶなんて、さぞかし愛着があるのかと思いきや、そこには経営者としての戦略が顔を覗かせる。

店の立地に依存せずオンライン販売によりタイ全土へ商品を配送するという構想が当時からあった。生菓子だと配送領域が限られるので、全国へ配送できる商品は何かを考えたときに、頭に浮かんだのがコンフィチュールだったという。そのテーマとして掲げているのは “Natural & Healthy”。食品添加物や着色料などを一切使用せず、また砂糖などは最低限に抑えて素材の味を最大限に引き出す、美味しくて体に優しい味わいを何よりも大切にしているのだ。

「タイ人は昔から甘いものが大好きですが、近年はその嗜好に変化が起きています。以前はドリンクやケーキなど砂糖やシロップがたっぷりと入った人工的な甘さが好まれていましたが、今はナチュラルな素材そのものの味を求める人が増えています。それは日本の方々の嗜好に通じる考え方であり、僕自身もお店を通して日本で学んだフルーツや野菜の素材本来の味わいを伝えていきたいです」

年中暑いタイにも「旬」はある

四季それぞれで食材がもっとも美味しく味わえる時期を、日本では当然のように「旬」と呼ぶが、ここ南国のタイでは年中栽培できる青果物も多く、日本に比べて旬に対する意識がやや薄いのが現状だ。そんな旬について、ソロジさんはどのように考えているのだろう。

「やはり食材は旬に食べるのがベスト。その意識は、日本への旅行回数に比例している気がしますね。当店をご利用するお客さまはその旅行回数に加えて食や健康に対する意識が高く、日本の旬にも詳しい方が多いです。ただ、そうでないタイ人にとっては日本の旬と言ってもピンと来ません。もし旬という付加価値をつけて日本産の果物や野菜をタイで知ってもらうためには、インフルエンサーや店舗などで一斉にPRするなど視覚的に認識させる何かしらの仕掛けが必要かもしれませんね」

そう話すソロジさんは、タイならではの旬をコンフィチュールに閉じ込める。2〜4月ならマヨンチット(タイ風びわ)、4〜5月ならマンゴー、5〜6月ならマンゴスチンという具合に、The Confiture には季節限定の商品が代わる代わる登場するのだ。また、日本産の白桃や巨峰など日本人にお馴染みのものやほうじ茶、アールグレイといった茶葉を活かしたものまであり、訪れるたびにワクワクさせてくれる。

「Fruitful Japan」で日本産青果物の新メニューを開発

日々コンフィチュール作りに励み、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大にも負けずファンを増やし続けてきたソロジさん。今年2月には⽇本貿易振興機構(以下、JETRO)バンコク事務所が実施した日本産青果物の魅力を発信するプロジェクト「Fruitful Japan」に参加。いちごやりんご、さつまいもなど日本で旬の青果物を使い、新メニューを開発するというテーマを受け、ソロジさんは栃木県産のいちご(とちおとめ)、宮崎県産のさつまいも(紅はるか)、青森県産のりんご(さんふじ)を選んだ。

「日本で育った青果物本来の味を100%に近い形でお客さまに食べていただくことに注力し、3種の商品を開発しました。当店のコンフィチュールは食材同士を組み合わせたり、スパイスを加えるといったペアリングメニューが多いのですが、今回は手を加え過ぎないシンプルさを追求しました」

3つの新メニューをSNS上で告知したところ、最短9分で完売するなど大好評。その反響を受けたソロジさんは一部の食材を継続して入荷することを決めたという。

かねてから「日本産青果物は美味しいけど高い」「食べたいけどなかなか手が出ない」といった声を時折タイで耳にするが、今回一番人気だったコンフィチュール「TOCHIOTOME」は1本400B(!)にも関わらず飛ぶように売り切れた。The Confiture の客層にガッチリとハマった点が一番の理由だが、ソロジさん曰くその他にも手応えを感じたことがあるのだとか…?

「ただ『日本産いちご・とちおとめ、1本400B』と紹介しただけではその特別さが分からないと思っていたので、食材のバックグラウンドを研究し、消費者にあまり知られていない拘りの栽培方法や、それぞれの産地の特徴の違いを十分に伝えることを意識しました。また、その食材の特徴をパティシェの観点からどういう風に磨くなどの時間と情熱を語ることで、お客様が納得して購入してもらえたのではないか、と感じています。」

日本産だからこその“美味しさへの信頼”

「これまでも白桃や巨峰など日本産フルーツを使うことはあったのですが、今回Fruitful Japanに参加したことで改めて日本産は信頼できると実感しました。バラつきのない安定した品質と美味しさに裏切られないと経験上知っているので、たとえその味を知らなかったとしても私は迷うことなく手に取るでしょう。それに、日本は季節の移り変わりがタイよりも細かく明確に分かれているため、果物のバリエーションが豊富ですよね。一つの果物でもさまざまな品種があり、味や香り、色味、サイズなど個性が多様で、作るお菓子によって使い分けることができる点も魅力だと感じます」。

日本産青果物への興味が尽きないというソロジさんだが、やはりコスト面から何でも手を出せるわけではないのが悩みどころなのだとか。

「どうしても日本産は国内や周辺国の青果物に比べて値段が上がるため、新規メニューとして気軽に試せない…というブレーキはかかります。当店以外でも日本産青果物に興味を持っている知人はいるので、トライアル価格などができたら非常にありがたいですね。あくまでも願望ですが(笑)」。

>The Confiture
Address:9/4 Soi Rachadapisek 29, Rachadapisek Rd., Chatuchak
Tel: 087-111-5517
IG: TheConfiture
Line: @TheConfiture(日本語可)
Web: https://www.facebook.com/theconfiture

私と日本」とは?

日本語を話し、日本の価値観を身につけたタイ人から見た、日本の姿とは何か?2つの言葉で2つの国を駆け抜けるタイ人の人生に迫る、タイでのビジネスにヒントをくれるドキュメンタリーコンテンツ。
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執筆 山形 美郷

日本での編集業務を経て、タイのビジネス系・ライフスタイル系フリーペーパーなどで執筆。“タイの暮らし”をテーマに、現地に生きる人々のインタビューを通して現地のリアルを発信。ガイドブックや日本のカルチャー雑誌などでのライター・コーディネーター業務も請け負う。

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