【JETROバンコク事務所 x EEC事務局共催ウェビナー レポート】カーボンニュートラル達成に向けたサステナブルビジネス〜日タイの官民の取り組み - mediator

Blog 【JETROバンコク事務所 x EEC事務局共催ウェビナー レポート】カーボンニュートラル達成に向けたサステナブルビジネス〜日タイの官民の取り組み

2022年04月28日 (木)

イベント
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2022年2月7日(月)にJETROバンコク事務所とEEC事務局共催で「カーボンニュートラル達成に向けたサステナブルビジネス」をテーマ​​としたウェビナーが開催されました。メディエーターは、本ウェビナーの司会進行及び運営を担当しました。

JETROバンコク事務所とEEC事務局は、2022年1月13日に日タイ間のより強靭なサプライチェーンの構築や、タイにおけるBCG政策の進展など両国の重要な政策に貢献しつつ、日本企業のタイ、そして特にEEC域内への投資促進を支援する​主旨の協⼒覚書を改定しました​​。その協力覚書に基づく具体的な取組みの第一歩として、本ウェビナーでは、カーボンニュートラル達成に向けた両国の政策や官民の取組みを紹介しました。

当日は、800名以上もの方が参加し、改めてカーボンニュートラルや環境に配慮したサステナブルビジネスへの関心の高さをうかがい知ることができました。今回は、本ウェビナーに登壇した日タイの代表機関や民間企業のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みや今後の展開についてレポートします。日タイ両国での今後のビジネス展開にぜひお役立てください。

スマートエコ工業団地のためのグリーンソリューションアプローチ|タイ工業団地公社(IEAT)

タイの工業団地は、在タイ日系企業にとっても馴染み深いところでしょう。タイ全土の工業団地の開発や管理を担っているのがタイ工業団地公社(IEAT)。IEATからは、サステナブル開発を担当するブッパ副総裁が登壇し、スマートエコ工業団地のこれまでの取り組みと今後の展開について次のように説明しました。

「IEATがドイツ政府の協力を得て『エコ工業団地』を導入したのは1999年のこと。その後エコファクトリー開発を進め、2019年からは、GHG排出削減で『スマートエコ4.0』『エコ効率』の取り組みを開始。2020年には5ヵ年のGHG削減計画を立て、再生可能エネルギー促進策も導入​​しました。

具体的な取り組みとしては、2024年の竣工を目指して、現在EEC域内で『スマートパーク工業団地』を造成中です。スマートパーク工業団地では、宇宙・ロジスティクス、医療機器、ロボティクス・自動化、デジタルなどの低炭素化産業の誘致を目指しています。」

さらに、「IEATでは、カーボンニュートラル実現に向けて、今後も民間企業との連携に加え、こうした環境対策をその他の工業団地でも順次展開していく方針である」と付け加えました。

タイの温室効果ガス排出管理と炭素クレジット取引プラットフォーム|タイ温室効果ガス管理機構(TGO)

温室効果ガス管理機構(TGO)からは、カーボン市場とイノベーション促進事業のマネージャーを務めるパトン氏が登壇し、タイのGHG排出管理とカーボンクレジット取引市場の仕組みを紹介した後、TGOが2014年に開発したタイ独自の「タイランド・ボランタリー・エミッションズ・リダクション(T-VER)」の仕組みを紹介しました。さらに、日タイ間のクレジット制度(JCM)についても言及しました。

パトン氏によると、タイのカーボンクレジット市場での取引高は継続的に拡大し、トン当たりの平均価格も上昇し続けているものの、取引価格はプロジェクトのタイプに影響を受けており、現状で最もカーボンクレジット取引高が多いのはバイオマスで、次いで水力、太陽光、バイオガスとなっているとのこと。

なお、タイのカーボンクレジットは、TGOが運営する「eプラットフォーム」で登録や取引などが管理されています。

グローバルな持続可能性に向けたサーキュラーエコノミー|PTT Global Chemical

ここまでは、カーボンニュートラル達成に向けたタイの公的機関の取り組みについてでしたが、ここからは日タイの民間セクターの取り組みについて紹介します。

タイの大手化学会社​​PTTグローバル・ケミカル(PTTGC)からは循環型経済部門のマネージャー、パタラポン氏が登壇し、同社のサステナビリティに関する取り組みを紹介しました。

「特に力を入れている循環型経済では、サプライチェーンにおける事業の効率化を強化する『スマート・オペレーティング』、環境に優しい製品・サービスを生産する『レスポンシブル・ケアリング』、バリューチェーンの全利害関係者をつなぐ『ループ・コネクティング』の3つを主要なフレームワークとしています。この枠組みをデカーボネーション(脱炭素)フレームワークに進化させ、GHG排出量を2050年までにネットゼロにする目標を設定し、2021~2050年にGHGの削減・除去に50億ドル、事業構造の調整に220億ドルの投資計画をしています」

さらにパタラポン氏は、循環型経済モデルは、タイの経済成長に貢献できるとし、​​このモデルを達成するには「事業化の準備とコンセプトの理解」「技術とイノベーション」「政策のサポートとエンゲージメント」が重要であると付け加えました。

カーボンニュートラル社会実現に向けた取り組み|泰国三菱重工業

続いては、在タイ日系企業を代表して泰国三菱重工業の田久保社長が登壇し、同社のカーボンニュートラル達成の取り組みについて次のように説明しました。

「中期経営計画『2021事業計画』の柱である『成長領域の開拓』の重要施策の一つが『エナジートランジション』です。カーボンニュートラル社会に向けて、短期的には既存インフラの脱炭素化を目指しており、水素とアンモニア発電によるカーボンフリー電源を商用化するための開発・実証試験や次世代軽水炉、小型炉による原子力発電の推進に取り組んでいます。
さらに中長期的には水素エコシステム、CO2エコシステムの構築を目指しています。CO2エコシステムでは『回収』『輸送・貯蔵』『転換利用』までの技術開発が必要となりますが、三菱重工はCO2回収システムでは世界最大のプラントを既に実用化しています。CO2回収技術は産業界からも多数の引き合いがあり、発電システム以外の産業用も確実に対応していけるよう取り組んでいます。
CO2貯蔵から転換利用に関しては、『CO2NNEXTM』というプラットフォームを使ってCO2の流通を可視化するサービスをIBMとともに展開するなど、CO2バリューチェーン全体を繋いでCCUS事業の活性化に取り組んでいます」

また、田久保社長は、三菱重工グループは2021年10月に2040年までにカーボンニュートラルを宣言したことにふれ、「脱炭素化分野で実績を誇るリーダーとして、気候変動対策を先導していく責任がある​と考えており、CO2削減に貢献できる製品・技術・サービスを通して社会のネットゼロに貢献していきます。日本のグリーン成長戦略とタイのBCG経済モデルは合致する分野も多く、お互い協力できると信じており、​​三菱重工としても自社の技術とソリューションでタイの企業や社会のエネルギー・トランジッションとカーボンニュートラルの実現に貢献していきたい」と締め括りました。

紙やプラスチックの代替としての石灰石利用による持続可能なソリューション|TBM

本ウェビナーの最後に登壇したのは、2011年創業の日本のベンチャー企業TBMのグローバル・アライアンス部を統括する中村氏。同社は、「LIMEX(ライメックス)」いう新素材と「CirculeX(サーキュレックス)」という素材を開発・製造しており、まずLIMEXについて次のように説明しました。

「LIMEXは、石灰石(limestone)を主原料にプラスチックや紙の代替​​となる新素材です。石灰石は、世界中に豊富に存在し、枯渇の心配が非常に少なく、地域的な偏在もなく現地で地産地消でき、また安価で価格変動も少ないため、エコロジーとエコノミーを両立することができる原料です。石油由来の樹脂と比較して原料調達でCO2排出量が50分の1、焼却時のCO2排出量を58%削減でき、脱炭素にも貢献できます」

LIMEXのエコロジーとエコノミーにおける価値は次の通り。
<エコロジーにおける価値>
①石油由来の樹脂の使用量を減らせるため、石油への依存度やプラスチックの消費量が減り、CO2の排出量を削減​​
②紙の代替としては水や木を殆ど使用しないため、森林・水資源の保全につながる

<エコノミーにおける価値>
環境に配慮した植物由来のバイオマス樹脂や生分解性樹脂​​などの脱プラスチックの素材は通常の樹脂の数倍の価格になるのに比べて、LIMEXは石灰石を使うことで価格を抑えて、通常の石油由来の樹脂とも戦えるような価格を実現できる​​

LIMEXの主な実用例としては、レジ袋や食品容器、文房具や各種アメニティ、ハンガーなどのプラスチックの代替製品と名刺、メニュー表やポスター、ラベルなどの紙の代替品。

さらに中村氏は同社の今後の展開として、
「循環型経済の面では、アップサイクルにも力を入れており、紙代替として使ったLIMEXをプラスチック代替素材として再生することが可能です。既にいくつかの企業や自治体とのコラボレーションしたLIMEXのアップサイクルの実績はありますが、それだけではなく、2022年秋から、横須賀市に日本で最大規模のリサイクルプラントを稼働予定です。ここでは​​LIMEXだけでなく、家庭や事業所から排出される廃プラスチックも回収し、処理能力は年間4万トン、再生ペレットの製造能力は2万4,000トン​に​なります。

また、LIMEXの開発だけでなく、それ以外の集めてきた廃プラスチックを含めた再生材を主原料とした素材開発もしており、今回新たにCirculeX(サーキュレックス)というブランドを立ち上げました。既にゴミ袋等に採用されており、今後も用途を拡大していく予定です。

TBMは、​​LIMEXとCirculeXの技術を活用して2030年にカーボンネガティブの実現と世界50カ国で100万トンの​​LIMEXとプラスチックを循環させることを目標としています。​​資源循環を通じて地産地消(原料調達、マーケット展開、アップサイクル)の循環型経済のモデルを築き上げることが脱炭素に大きく貢献できると考えています。この循環型経済を実現していく技術と仕組み、そして価値感をパッケージとして日本やタイ、そして世界各地でローカルに実現し、​​将来的には素材開発の事業に限らず、サステナブルビジネスで世界でのトップランナーになることを目指しています」と述べました。

開催概要

タイトル:カーボンニュートラル達成に向けたサステナブルビジネスセミナー
開催日:2022年2月7日(月)​​
アジェンダ:
1. 開会の挨拶
– Dr. Kanit Sangsubhan | Secretary General, EECO
– Mr. TAKETANI Atsushi | President​​, JETRO Bangkok
2. 基調講演
BCGエコノミーモデルの概要 ‒ タイの持続的成長エンジン
– Dr. Janekrishna Kanatharana | Executive Vice President, NSTDA
3. 講演
BCGモデルの展望
– Mr. KATO Takeo | Vice President, Chairman BCG Business Committee Japanese Chamber of Commerce, Bangkok
4. スピーチ
① スマートエコ工業団地のためのグリーンソリューションアプローチ
– Mrs. Buppa Kawinvasin | Assistant Governor (Sustainable Development) , Industrial Estate Authority of Thailand (IEAT)
② タイの温室効果ガス排出管理と炭素クレジット取引プラットフォーム
– Mr. Pathom Chaiyapruksaton | Manager of Carbon Market and Innovation Promotion Office, Thailand Greenhouse Gas Management Organizaton (TGO)
③ グローバルな持続可能性に向けたサーキュラーエコノミー
– Dr. Pattaraporn Sridechprasat | Division Manager, Circular Economy Ⅱ, PTT Global Chemical
④ カーボンニュートラル社会実現に向けた取り組み
– Mr. TAKUBO Ryo | President & Managing Director, Mitsubishi Heavy Industries (Thailand) Ltd.
⑤ 紙やプラスチックの代替としての石灰石利用による持続可能なソリューション
– Mr. NAKAMURA Tomoya | Head of Global Alliance, TBM Co., Ltd.
4. 閉会の挨拶
– Mr. TAKETANI Atsushi | President, JETRO Bangkok

◆主催者
・独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)バンコク事務所
・EEC事務局

◆協賛
・タイ国立科学技術開発庁(NSTDA)
・バンコク日本人商工会議所
・タイ工業団地公社(IEAT)
・タイ温室効果ガス管理機構(TGO)

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執筆 mediator

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