タイの商務省(DBD)発行レポート「2020年の企業情報」
タイでは、タイの商務省が管轄する事業開発局(Department of Business Development:通称DBD)が公開しているデータベースで、タイで登記されている企業の情報を調べることができます。今回は、このDBDが2021年1月に発行した最新レポート「ข้อมูลนิติบุคคล ประจำปี 2563(2020年の企業情報)」を眺めながら、タイで活動する企業の概要とその中での日本企業の立ち位置について考えてみたいと思います。
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なお、日本では事業者全体358.9万者のうち、大企業が約1.1万者(0.3%)、中規模企業約53万者(14.8%)、小規模事業者約304.8万者(84.9%)となっており、全企業の99.7%が中小企業です。(出典:中小企業庁発表:2021年版「中小企業白書」より)
|出典:ข้อมูลนิติบุคคล ประจำปี 2563
WEB:https://www.dbd.go.th/news_view.php?nid=469419336
PDF:https://www.dbd.go.th/download/document_file/Statisic/2563/H26/H26_2020.pdf
E-Book:https://www.dbd.go.th/download/document_file/Statisic/2563/H26/H26_2020.html
法人登記している会社の数は、約77万社。謎に包まれた屋台事業主は約300万社?!
こちらの表はタイで活動している企業の数を示したものです。タイで決算書を提出し、運営がされていると確認された企業は全部で769,208社。このうちタイの証券取引所に上場している公開株式会社は1,282社、非公開の株式会社は580,911社、合同会社が187,015社となります。
この中には皆さんがよく目にする、屋台は含まれておらず、個人事業主という位置付けでその数は約300万社と言われています(中小企業振興事務局:Office of SMEs Promotion(OSMEP)発表)。彼らは主に現金でやり取りをしており、収入の実態はつかめておらず、ほとんどの屋台が法人税などは支払っていません。実は屋台でしっかりと稼ぎ、息子をイギリスに留学させ、自身は高級車に乗っているという豚串を販売する屋台の話は有名です。格差社会とは言われるものの、実は表に出てこない裕福な屋台事業者もいるのです。(P.69:タイの会社数)
きちんと企業活動しているのは、資本金が100万バーツ以上のたった約31万社?!
続いて、この法人登記している約77万社の資本金についてみていきましょう。資本金100万バーツ以下が452,938社(58.88%)、100〜500万バーツが227,977社(29.64%)、500〜1億バーツが72,225社(9.39%)、1億バーツ以上が16,068社(2.09%)です。
資本金が100万バーツ以下という会社は税金対策が目的の登記も多く、企業活動を積極的にするには少なすぎる金額です。きちんと企業間での取引があり、企業活動をしていると言えるのは、資本金が100万バーツ以上の316,270社、さらに言えば、日本企業と取引ができるのは資本金が500万バーツ以上の88,293社とみて良いでしょう。(P.36:登記している企業の資本金)
全体の1.6%の大企業が、全体の59%の売上を占めている!
続いて、2015年〜2019年の4年間で継続して決算報告を行なった企業571,183社の企業規模と売上を見てみましょう。タイでも日本と同じように企業規模に定義が定められていますが、日本とタイで異なる点として、日本で使われている指標が資本金に対して、タイでは売上であることです。
|タイにおける企業規模の定義
大企業(製造業:従業員数200人以上・売上5億以上|商業:従業員数100人以上、売上3億以上)
中企業(製造業:従業員数50〜200人・売上1〜5億|商業:従業員数30〜100人、売上5,000万〜3億)
小企業(製造業:従業員数50人以下・売上1億以下|商業:従業員数30人以下、売上5,000万以下)
※日本の中小企業・小規模企業者の定義はこちら。
グラフの一番右側、大企業に指定されている企業が9,110社あり、彼らの売上は27兆バーツ(利益1.7兆バーツ)。全体の1.6%の大企業が、全体の59%の売上を占めているのです。なお、小企業の売上は1.6兆バーツなのですが、利益はなんと7,329億バーツの赤字。利益が出ていないので、法人税の支払い対象になりません(利益が出ている会社もありますが、全体では赤字となります)。統計上、法人税は中企業と大企業を合わせた22,830社(4%)しか支払っていないのです!いかに少ない企業数でタイの経済を支えてかがわかる数字です。(P.56:企業の規模と売上)
日系企業は他国を抜いてダントツNO.1!タイへの貢献度に感謝!
それでは最後に、タイにおける日本企業の立ち位置について見てみましょう。まず、タイで法人登記されている全ての会社約77万社の資本金総額は19.17兆バーツです。このうち、3.5兆バーツ(18.27%)が在タイ日系企業を含む外資系企業です。
|タイにおける外資系企業の資本金国別ランキング(単位:100万バーツ)
1. 日本:948,490.63
2. シンガポール:352,182.94
3. 中国:223,881.03
4. 香港:127,958.08
5. アメリカ:126,520.88
6. ドイツ:103,378.99
7. ヴァージン諸島(イギリス):94,838.99
8. イギリス:54,056.72
9. ケイマン諸島:50,953.71
10. 台湾 :50,879.99
この中で日本はグラフの一番左側で4.95%の9,484億バーツ。2位のシンガポールを大きく引き離すダントツの1位なのです。なお、話題の中国は第3位の1.17%(CPやTCCなどの華僑のタイ企業は含まず、タイ企業としてカウント)。日本がタイにどれほど貢献してきたかが、よくわかる数字です。(P.38:タイにおける外資系企業の資本金国別ランキング)
タイ企業と日本企業を繋ぎ、両国に新しいビジネスをつくり出したい!
産業の高度化を目指して、次々に政策を打ち出すタイ政府ですが、タイ側の企業も外資系の企業も厳しい競争下に置かれています。これまでの産業構造が変わろうとしている中、僕は、もっともっと、これまで以上に日本企業とタイ企業が近づいて、お互いの強みを活かしたビジネスづくりに進んでいかなければならないと感じています。
先述したとおり、タイで法人税を支払っている、日本企業とパートナーになれそうな会社は、推定22,830社(4%)しかありません。しかし、もうすでにパートナー候補が22,830社まで絞り込まれているという見方もあります。世界屈指の日本人社会が確立しているタイですが、日本人にもタイ人にも、もっと接点を持って欲しいと思っています。僕が間に入ることで両者をつなぎ、日本とタイに新しいビジネスが生まれるきっかけを作りたいと思っています。