第3回|自分の中にリーダーシップを見出し、自分で車輪を押し始める(古河ファイテルタイランド × Coach A) - mediator

Blog 第3回|自分の中にリーダーシップを見出し、自分で車輪を押し始める(古河ファイテルタイランド × Coach A)

2020年06月17日 (水)

企業取材記
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コーチングを通して、コアメンバーのコミュニケーション力が鍛えられ、他部署との交流も活発になったという古河ファイテルタイランド。まだ課題は残りますが、大きな一歩を踏み出したことは間違いありません。コーチングを通して、同社はこれからどのような方向に進んでいくのでしょうか。熱い対談の最終回です。

KPIのフォローミーティングになってしまった

ガンタトーン:コアメンバーが充分に温まったその次は、他のステークホルダー(コアメンバーから社内コーチを受けるメンバー)にその熱を伝播するステージですよね。現状はどのように進んでいますか?

小神野:率直に言って、コアメンバーほどステークホルダーはまだ温まっていないと思います。コアメンバーとセッションをしたときに、「ステークホルダーの反応はどうか」と尋ねたら、「新しいことにチャレンジするようになった」と聞いていたので期待していたのですが、ステークホルダーに大きな変化は見られませんでした。オペレーター500余名をのぞく200数十人の全社員に対して、会社のゴールに対する理解度や日頃のコミュニケーションの有無などを20項目にわたって尋ねたサーベイの結果を見ても、多少、個人差はありますが、ステークホルダーにはあまり変化は見られませんでした。

ガンタトーン:それはどのような理由からでしょうか?

小神野:コーチングのセッションがKPIのフォローミーティングになってしまったんですね。ターゲットが業務改善になってしまった。私たちはコーチングをしていると思っていても、相手は業務改善だと捉えたようです。私も含めて、コアメンバーもコーチングは初めてですから、コーチングにこだわり、力が入りすぎたのかもしれません。この反省を活かして、コーチングにはそこまでこだわらず、単なるツールとしてディスカッションし、会社が掲げているゴールについての会話を増やしていきたいと考えています。

青木:パイプラインは作られたものの、そこに流し込む水が足りなかったのかもしれません。小神野さんとコアメンバー以外の他のメンバーとの間で、関わる頻度や対話の内容などが少し曖昧になっていたように思います。これから重要なのは、ゴールに近づいていくためには何をなすべきなのか、それは何のためなのかという“Why”にフォーカスすることでしょう。こうなりたいという未来に向けた対話を意識していくことが大切です。未来の画素数を上げていくアプローチです。

車輪が回り始めるまであとひと押し

ガンタトーン:コアメンバーが温まるのにかかった時間は約1年。次のステークホルダーが同じように変わるまでにはどれくらいの時間が必要だと見ていますか?

小神野:次のステークホルダーとして20名を設定していますが、ここが温まるまでには、後1年かかると見ています。そこまで行けば加速度がつきそうです。

青木:古河ファイテルさんの素晴らしい点は、タイ人社員の方々が本当に主導していること。在タイ日系企業の場合、コーチングは日本人のリードになりやすいんです。でも、こちらの会社はそうではない。タイ人のコアメンバーがチームリーダーとしての役割を果たしています。タイ人が主導しているという点では、在タイの日系企業の中ではナンバーワンだと思います。1年が終わった後に実施したサーベイを通して、みなさんが真剣に対話を行ってこられたことはよくわかりました。これは大きな財産です。小神野さんがいなくてもやっていける力はすでに備わっているはず。コアメンバーはすごいチームになっていますから、これから周りを巻き込んでいくでしょう。

ガンタトーン:車輪は回り始めていますか?

青木:そう思います。みな自分の中にリーダーシップを見出して、車輪を押している。これが、古河ファイテルさんの内部のエネルギーになっています。

ガンタトーン:小神野さんが目指している「古河電工グループのコアの会社になる」ための原動力になっているんですね。

青木:はい。次のチャレンジとしては、古河ファイテルさんがグループのモデルとなり、エクセレントカンパニーとなり、頼もしいパートナーになっていくために、外に意識を向けていくことでしょう。プロアクティブコミュニケーションが良い問いを生み、未来への画素数を上げています。よりバージョンアップするといいですね。本当にあとひと押しだと思います。

相談されてもすぐに答えは提示しない

小神野:でも、スピードを上げていこうとは思っていないんですよ。焦ってもいいことはありません。ステップバイステップの速度でいい。ただし、去年と同じでいいとは思っていません。去年の反省もあるので、何か新しいことをやらないとだめでしょう。じゃあ、何をやっていくか。それは、これから議論をしていきます。

青木:コアメンバーとステークホルダーの温まり方が違うのはよくあることです。コアリーダーが自ら体感したことをいかにステークホルダーに体験として伝えていくか。ここからが本当のチャレンジ。しっかりとサポートしていきたいと思います。

ガンタトーン:タイにはたくさんの日系企業が進出しています。その中には、タイ人とのコミュニケーションを最初から放棄しているような会社も少なくありません。でも、古河ファイテルさんにはそうした傾向はまったくないですよね。それはどうしてでしょうか?

小神野:タイに進出している以上、タイ人とのコミュニケーションは何よりも大事。それが当たり前だと思いますが、弊社の場合、もともとファミリーライクな関係が強いのかもしれないですね。そのため、時々厳しさが足りなくなる面もあります(笑)。もっとも、コーチングを導入してからは、ファミリーライクな雰囲気はそのままですが、何か相談されてもアドバイスや答えをすぐに言わなくなりました。「こうすれば」というのは簡単です。でも、自分で考えてもらいたいので、まず「どうしたいのか」と相手の意見を最後までしっかりと聞くようになりました。

ブラニー:確かに自分の頭で考えるようになりました。最初は、相談してもすぐに答えを言ってくれないので抵抗感がありましたが(笑)。

ガンタトーン:自分の頭で考えるようになったということは、みなさんが自分で車輪を押し始めたということですね。古河ファイテルさんが古河電工グループのコアのエクセレントカンパニーに成長する日が楽しみです。本日は、ありがとうございました。

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執筆 三田村 蕗子

ビジネス系の雑誌や書籍、Webメディアで活動中のフリーライター。タイをもう一つの拠点として、タイはじめとするASEANの日系企業や起業家への取材も手掛ける。新しい価値を創出するヒト、店、企業の取材が得意技。コロナ禍で絶たれたタイとの接点をどう復元するか模索中。

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