進化するオンライン商談会! 日タイを熟知したタイ人通訳が語る「タイ人に刺さる」商談とは? - mediator

Blog 進化するオンライン商談会! 日タイを熟知したタイ人通訳が語る「タイ人に刺さる」商談とは?

2022年01月05日 (水)

販路開拓・進出
進化するオンライン商談会! 日タイを熟知したタイ人通訳が語る「タイ人に刺さる」商談とは?のメイン画像

今回は、日タイの商談を陰で支える通訳目線でオンライン商談会にフォーカス!日本語通訳歴10年以上、年間50件以上の商談会のサポート実績を持つタイ人通訳に聞いた「タイ人に刺さる」商談のポイントをご紹介します。

プロフィール

■ニンさん(右):高校1年生から日本語の勉強を始め、チュラロンコーン大学では日本語学科を専攻し、在籍中にアルバイトとして日本イベントの通訳を経験。卒業後から本格的に日本語通訳の道に進み、その実績は14年。

■パースさん(左):高校3年生から日本語の勉強をはじめ、チュラロンコーン大学の日本語学科に進学。高校時代、大学時代と2回日本への留学を経験し、卒業後は日系企業の秘書・通訳として勤務。その後フリーランスの通訳に。

タイ人相手の商談が成功する5つのポイント

新型コロナウイルスの影響により、その必要性がどんどん高まっているオンライン商談会。顔と顔を向かい合わせて行っていた従来の商談会と比べ、その段取りや手法が異なるというのは周知の事実かと思いますが、日本人同士ではなくタイ人相手となるとなおさらです。

ここ数年でオンライン商談会は一般化されてきて、動画の活用などプレゼン方法にも様々な変化が見られるようになってきていますが、さらにもう一歩、商談を成功に導くためには「タイ人の心をいかに動かすことができるか」も大きな鍵となります。そこで、これまでに数多くの商談会で通訳を経験してきたニンさんとパースさんに「成功する商談会」の特徴を伺うと、以下のポイントが見えてきました!

①一つ(少数)の商品にフォーカスしている
商談相手は、事前に複数企業と連続で商談を行っている場合も少なくありません。相手に強く印象づけるためにも、多数の製品ではなく「何か一つ(もしくは少数)に特化」して紹介することが大切。

②動画や画像を要所で活用している
会社紹介として冒頭に3分前後の動画を持ってくることは、相手の興味を引き、かつ視覚的に会社の特徴を理解してもらいやすい。言葉だけの説明ではなく、製造現場や生産過程、使用事例といった場面を動画などで交えながら端的に伝えるのが効果的です。

③類似商品との違いを分かりやすく伝えている
例えばすでにタイで流通している製品をプレゼンする場合、グラフや図などを用いてその特徴を明確に示すことが重要。 ※注意したいのが「生産地」について。生産地自体も特徴の一つとしてPRする製品もありますが、地方の郡や村といった細部にフォーカスし過ぎるとタイ人には逆に伝わりにくくなることもあります。

④製品だけでなく実際の使用事例も紹介している
相手に製品の魅力が伝わったとしても、自社・自店でどのように展開できるかタイ人にとっては使用イメージが浮かばない場合があります。各製品の特徴に加えて、現場での使用イメージや活用方法を画像・動画で紹介することも必要です。

⑤独自のストーリーを持っている
自社の独自性を示す手段として、その製品が出来上がるまでのストーリー(過程・想い)を熱意を持って伝えることはタイ人の心を動かす大きなポイントの一つ。そのストーリーが契約に直結することも珍しくありません。

ズバリ!直した方がいいと感じる日本人のプレゼンとは?

タイ人と日本人、どちらの立場・気持ちも把握しているニンさんとパースさん。幾多もの商談会を経て、プレゼンを行う日本人側に対して直した方がいいと感じる点もあるのでしょうか?

「もっとこうしたらいいと思うことは、相手の質問に対して簡潔に答えることでしょうか。タイ人は質問に対してYESかNOかという結論を求めています。それに対し、日本の方々はまず説明から入ってしまい、最終的なゴールを見失い、結果としてタイ人側に伝わらないケースが少なくありません。あとは求められた資料・情報をすぐに提示できるようZoom(使用するツール)に慣れておくことだと思います」(ニンさん)

「私が思うのは伝えたい内容を短く区切ることですね。通訳が必要な場合、日本語で話している間はどうしても相手を待たせてしまう。長く話している分、相手の集中力が切れてしまいますし、購買意欲が減少することに繋がってしまうと感じます。また通訳自身が話のポイントを掴み切れなくなることもあるので、事前に伝えたい内容を小分けにして準備しておくといいと思います。あとは対面式より声が聞き取りづらいので、ハッキリと話すこともポイントでしょうか」(パースさん)

この他、その場で簡単な見積もりを欲しがる企業も多いと言い、すぐに回答できるよう事前に金額をタイバーツに換算しておくことも必須なのだとか。

「日本企業同士の場合は、商談後にカタログを送ってもらい、社内で検討する…と時間を置くケースがよく見受けられますが、タイ企業はまず予算に収まるかどうかも含めて検討したいと考えています。その場で提示できない(時間を空ける)と商談相手の熱量も下がってしまうこともあるので、質問を想定し、その場ですぐに回答できるよう備えることが重要だと思います」(ニンさん・パースさん)

「1+1を10にする」通訳の心構え

これまでプレゼンに向けたポイントをご紹介してきましたが、最後に通訳としての心構えを2人に直撃!商談会に向けて、どのような事前準備や意識で現場に臨んでいるのでしょう?

2人に共通していた答えは、企業情報や提供商品、業界内の専門用語の確認といった事前準備は言わずもがな。本業の通訳に加えて、双方のやり取りを円滑にする「進行役」としての役割も意識しているとのこと。

「話の途中で間ができてしまった時には質問を促したり、輸出に関わる基本情報や連絡先の交換といった必須事項が商談中に出てこなかった場合はこちらから確認したり、商談会がスムーズに進むことも頭に置いています。タイではビジネスの場でもLINEでやり取りを行うことが一般的なので、『相手に対して失礼になるかも』とためらわず、必要な場合はLINE ID を尋ねてみてください」(パースさん)

「それ以外としては、お互いの緊張を和らげることも意識しています。対面式の商談会では相手が目の前にいたため、その様子を感じながらスムーズに話し出せていたと思うのですが、オンライン商談会ではお互い終始探り探り、堅い空気で進むことも少なくないので。また、表情や声のトーンを意識的に明るくすること。相手の表情やリアクションが分かりづらいオンラインだからこそ、今まで以上に『分かりやすく伝える』ことを意識しています」(ニンさん)

通訳は皆さんの会社や商品を代行営業してくれる重要な役割を担っている人です。通訳を介してオンライン商談を行う際は、通訳しやすいシンプルな言葉選びや文章を短く区切るなど間の取り方にもぜひ気をつけてみてください。そうすることで、「1(営業)+1(通訳)が10」になり、より有益な商談に導くことができるでしょう。

山形 美郷の画像
執筆 山形 美郷

日本での編集業務を経て、タイのビジネス系・ライフスタイル系フリーペーパーなどで執筆。“タイの暮らし”をテーマに、現地に生きる人々のインタビューを通して現地のリアルを発信。ガイドブックや日本のカルチャー雑誌などでのライター・コーディネーター業務も請け負う。

Related Blog 関連ブログ

mediator newsletter

「mediator newsletter」は、日本とタイの最新情報をお届けするメールマガジンです。 ぜひ、タイでのビジネスにお役立てください。 購読をご希望の方は、右記よりご登録ください。