m-trip「果物王国!タイの果物の加工食品業界を見に行きます Chin Huay 社」 - mediator

Blog m-trip「果物王国!タイの果物の加工食品業界を見に行きます Chin Huay 社」

2017年04月28日 (金)

販路開拓・進出
m-trip「果物王国!タイの果物の加工食品業界を見に行きます Chin Huay 社」のメイン画像

2016年11月17日。タイのローカル企業を訪問するmediator主催の人気企画m-trip「果物王国!タイの果物の加工食品業界を見に行きます」が開催されました。Food specialty Co,. LTD.に続いて訪問したのは、ドライフルーツや魚の缶詰のメーカーのChin Huay Co., LTD.(以下、Chin Huay社)と滞在型果物農園です。新機軸の商品開発に力を入れるメーカーと、昔ながらの手法を使って果物を栽培し続ける農園で参加者は何を知り学んだのでしょうか。ツアーの後半をレポートします。

常にイノベーティブであれ

次に一行が訪れたのは、のChin Huay Co., LTD.((以下Chin Huay社)。90年余の歴史を持ち、主にドライフルーツ、魚の缶詰などを手掛けている会社です。

そのクオリティの高さと美味しさで飛躍的な成長を遂げてきた同社は、2016年度の輸出における首相賞を獲得。この賞は、輸出を行う中規模事業者にとってはもっとも名誉ある賞なのだそうです。

1925年の創業当時は、ナンプラーの生産からスタートを開始したChin Huay社は、その後、イワシを始めとする海産物の缶詰へと事業を拡張。缶詰はタイ国内で初の生産でした。同社の先進性がうかがえます。

1977年には冷凍食品分野に進出を図り、以後、ドライフルーツやラー油、漬物、醤油(タイ風)、乾燥魚など、ラインナップを着実に広げています。社長は言います。

「私たちが追求しているのは、お客様にとって新しくて新鮮で価値がある製品。安く作れるとか、大量に作って利益を上げるということよりも、イノベーティブであることを常に意識しています」

主力製品の一つ、魚の缶詰は毎年4万8000トンの魚を使用し、年間480コンテナの製品を生産。ドライフルーツは年間2万5000トンの原材料を用いて、8400トン分の製品を生産しています。フルーツの材料は、イチゴやリンゴなど一部以外はすべて国内調達。さすが果物のパラダイスです。一番人気はマンゴーだとか。

中華系の三兄弟で創業した同社の売上はこの7年で7億バーツから15億バーツへと急伸。従業員数も1400人を超えました。成長の原動力となったのがドライフルーツです。

「以前は缶詰とドライフルーツの構成品は6:4でしたが、現在は3:7。売上の70%をドライフルーツが占めています。乾燥しても食感が固くならない技術を用いたソフトドライフルーツをタイで初めて作ったのは弊社。それが急成長のきっかけとなりました」

2004年のバナナを皮切りに、マンゴー、ドリアン、オレンジ、パッションフルーツ等など、同社のソフトドライフルーツのアイテムは順調に増え、それが同社の成長を牽引してきたわけです。

栄養価のあるスナックを投入

輸出が89%を占めているドライフルーツ。中でも好調なのが米国の市場です。

「ポテトチップス代わりに食べるというファンが増えています。いま世界50カ国に輸出していますが、日本でもサービスエリアではオレンジのドライフルーツが人気商品なんですよ」

すっかり事業の屋台骨に成長したドライフルーツの市場には、競合も出現。ソフトドライを訴求する競合製品が増えてきましたが、社長はきっぱりとこう言います。

「果物や砂糖、加工方法に至るまでオーガニックを貫き、独特のソフトな食感を実現させているのが当社の強み。さらに新しい製品も投入しました。ジュースやビールなど飲料とともに食べたくなるナッツライス。栄養価のあるスナックです」

ナッツライスとは、カシューナッツにポップライス(ポップコーンと同じ製法で作ったお米の加工品)を組み合わせた製品です。

当初は、同社のオリジナルブランド「EROS」で発売していましたが、2016年から「Mable」ブランドに進化させ、現在、ミックスベリー、塩キャラメル、サワークリームオニオンの3種類を発売しています。価格は1袋30バーツ。働く女性を対象にした「Mable」は価格からいえば、大衆製品ではありません。タイにおいてはニッチな製品といえるでしょう。

それでも同社が自社ブランドで新しい領域に打って出たのは、現状維持に汲々としていてはイノベーションなど起こせないというポリシーが脈々と受け継がれているからです。

「コンビニで一番売れるのは飲料です。だから、飲料といっしょに食べてもらえるスナックとして『Mable』を開発しました。自社ブランドは今後も増やしていきたいですね。ずっと作ることを得意としてきましたが、これからは自分たちで売っていく製品にも力点を置いていきます」

2016年は真空フライのラインを新たに立ち上げ、乾燥機の設備も一新。カンボジアにも工場を設立しています。安心安全や品質を保証するGMPやHACCP、ハラルやコーシャ、USDA(米国のオーガニックの規格)を取得し、味や、北米、ヨーロッパ、南米、オセアニアなど世界中に輸出をしている同社。中国語表記の社名「進化公司」にふさわしく、タイを拠点に世界のマーケット攻略を着々と進めています。

果物農園に息づくスローで豊かな知恵と技術

フリーズドライやスプレードライ、ドライフルーツといった最新食品加工技術の粋を目の当たりにした一同が最後に足を運んだのは、ソムサックさんが運営する滞在型果物農園です。

農園内のバンガローに滞在しつつ、果樹園での作業やパームシュガーづくりなどを楽しむことができる果樹園では、オーガニック農法で育てられているココナツやタマリンド、マンゴーが芳醇な香りを発しています。

椰子の実からパームシュガーを作る工程はまさにスローライフそのもの。丁寧に時間と手間をかけながら果物を育て、実や殻などを一切ムダにすることなく有効活用する豊かな知恵と技術が農園には息づいていました。

ソムサックさんの案内で、足元に注意しながら農園をめぐり、畑を回り、とれたてのココナツジュースを飲み、ココナツの実を口にし、農園で販売されているパームシュガーの柔らかな甘さを堪能して感じたのは、タイの懐の深さです。

営々と培われてきた果物栽培のノウハウは、一見、施設をした食品加工工場と対極に見えますが、どちらも間違いなく、タイの一面です。スローな製法で送り出される製品もタイの魅力なら、日本を始め世界の食卓を楽しく豊かに演出している加工食品技術もまたタイの顔。前者は、今後、ツーリストの間でも親しまれていくのではないでしょうか。

そして後者は間違いなく、日本のこれからの「食」において重要な役割を果たしていく。そう実感したMtripでした。

1つ目の訪問企業 Preserved Food specialty社に戻る→

三田村 蕗子の画像
執筆 三田村 蕗子

ビジネス系の雑誌や書籍、Webメディアで活動中のフリーライター。タイをもう一つの拠点として、タイはじめとするASEANの日系企業や起業家への取材も手掛ける。新しい価値を創出するヒト、店、企業の取材が得意技。コロナ禍で絶たれたタイとの接点をどう復元するか模索中。

Related Blog 関連ブログ

mediator newsletter

「mediator newsletter」は、日本とタイの最新情報をお届けするメールマガジンです。 ぜひ、タイでのビジネスにお役立てください。 購読をご希望の方は、右記よりご登録ください。