東京都伊豆七島の島焼酎、正直どうですか?(Buy TOKYO推進活動支援事業"SHiMA-Hi!project") - mediator

Blog 東京都伊豆七島の島焼酎、正直どうですか?(Buy TOKYO推進活動支援事業”SHiMA-Hi!project”)

2017年06月22日 (木)

販路開拓・進出
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「Buy TOKYO推進活動支援事業」とは?

東京都内の中小企業が実施する東京の特色ある優れた商品(東京都産品)の販売やPR活動を支援するのが目的の事業で、東京都産品のブランド力を強化し、市場への浸透や海外展開の促進を目指します(BuyTOKYOのWEBサイトはこちら)。

本プロジェクトは「Buy TOKYO推進活動支援事業」の平成28年度採択事業で、「アウト&インバウンド型東京島酒・東京諸島ブランド強化事業(通称 SHiMA-Hi!project)」と題し、特定非営利活動法人八丈島産業育成会主催により、タイでの活動をmediatorが委託した業務となります。業務の期間は、平成28年8月〜平成29年3月までの8ヶ月間で、東京都(伊豆七島)で生産される島焼酎を中心に、タイ国(バンコク中心)での焼酎普及と伊豆七島への興味喚起を目的とした継続的なプロモーション活動により、東京島酒(焼酎)及び東京諸島ブランドの強化を図ることが目的の事業です。

島焼酎、PRのヒントを探るフォーカスグループインタビュー

「日本の商品はタイ人に受けるのだろうか?」タイ進出を考える際、どの企業様も必ず考える疑問の一つではないでしょうか。この疑問を解決する一つの手段として、ターゲットとなるタイ人消費者に直接インタビューを行い本音を聞き出す、フォーカスグループインタビュー(以下、FGI)という調査方法があります。今回私たちは、タイ人の飲酒習慣と日本の焼酎に対する興味や知識の深さを確認するため、FGIを通して実態把握の調査を行いました。島焼酎のコアなファンを作るためにはどうしたら良いのか?PRの方法を考えるためのヒントを探します。

ちなみに、日本の焼酎の認知度が低いことはかねてより予想されていたため、今回のFGIでは、もともとお酒をよく飲む参加者を集めて島焼酎に関すインタビューを行いました。また、今回は本事業関係者の皆さまも八丈島からご来タイされていたので、FGIに同席していただき、島焼酎についての意見交換会という雰囲気で実施しました。(本来のFGIは、参加者の意見に影響が出ないよう実施側関係者は別室にて待機となりますが、ご希望により同席も可能です)。

フォーカスグループインタビュー 概要

実施日時:2017年1月28日(土)15:00〜17:00

 参加者:タイ人5名(お酒が好きでよく飲む人、飲食店経営者)

インタビュー対象商品:羽伏浦、青酎、情島

インタビュー内容:普段の飲酒習慣について、焼酎のイメージ、試飲をしての感想

参加者プロフィール

GAPさん(男性30代後半):お酒は月に5〜9回程度飲みます。焼酎も好きで日本人の友人に飲み方を教えてもらいました。クラブやバー、洋食レストランや和食レストランで飲むことが多いですが家でも飲みます。ボトルで注文することが多いです。

KIMさん(男性20代前半):お酒は月に10回以上飲みます。一回の飲み代は800THB前後。ビールが一番好きで日本の焼酎は飲んだことがありません。

ICEさん(女性20代前半):お酒は月に5〜8回程度飲みます。一回の飲み代は500THB前後で友達と飲みに行きます。コンビニでもお酒を買って飲むことがあります。

HAMさん(男性20代後半):梅酒バーを経営していて、お客様は9割以上タイ人です。日本に留学経験があり、そこで日本のお酒が好きになりました。焼酎も飲んだことがあります。お酒を仕入れるときに大事にしていることは、味、ストーリー、種類です。

BANKさん(男性30代前半):バーレストランを経営していて、お客様はほぼタイ人です。外国のお酒を多く取り扱っていますが、日本のお酒は梅酒くらいです。焼酎は飲んだことがありません。お酒を仕入れるときに大事にしていることは、種類、味、卸価格です。

東京都伊豆七島の島焼酎、正直どうですか?

まず始めに参加者の皆さんに日々の飲酒習慣や飲むお酒の種類、焼酎に対するイメージなどをインタビューしました。

一般的にタイ人が認識している焼酎は韓国のソジュをさし、タイ人の焼酎に対するイメージも「濃くて飲みづらい、酒臭い」「労働者の飲み物(安くて美味しくない)」と言うのが一般的です。「韓国のソジュと日本の焼酎は何が違うのですか?」と言う質問に、今回、八丈島からご来タイされた「情島」という本格焼酎を製造する八丈興発株式会社の小宮山さんが丁寧に説明してくれました。すると参加者の皆さんもなるほどとご理解いただけた様子。ですが、実際にはお店でお客様お一人お一人に説明するのは難しいのが事実です。日本の焼酎に対する認知を広げつつも、何より美味しく飲んでいただけるような提案を続ける必要があります。

続いて、3銘柄の試飲による感想をいただきました。

こちらは三者三様で好みが分かれ、どれが良いという結論には至りませんでしたが、香りや味の違いはお分りいただけた様子で、焼酎にも様々な種類があるということは認識いただけたようです。飲み方もいくつか、水割りやロックなどで試していただきましたが、”芋の香り”以外に、ふわっとした甘さを表現する方もいれば、”焦げたような”と香ばしさを表現する方も。まだ慣れない焼酎の味に渋い顔をされた方がほとんどですが、味の表現方法は参考になりました。日本人が当たり前のように表現している”芋の香り”や”麦の香ばしさ”といった表現の言葉ですが、国が違えば表現も変わります。その国の人にとって伝わりやすい、馴染みのある言葉に置き換えることも大事かもしれません。

また、価格やボトルデザインなどをインタビューした時にはこんな意見も。

「タイ人はアルコール度数にこだわります。高額であれば長く飲みたい。だから度数も高い方がちびちびと飲めてお得です。アルコール度数が低くて飲みやすくて、あっという間になくなっちゃったらもったいないでしょ(笑)」

日本ではお手頃な焼酎もタイに輸入されると諸税が上乗せされ高級酒の仲間入りです。まして、アルコール度数で税率が変わるタイの法律では度数の高い焼酎の価格はさらに上がってしまうのです。また、タイでは酒類のPRも制限が厳しく、小売店での試飲提供はできません。積極的なPOPの掲示も厳禁です。試すことができないのに高額なお酒は見た目で買うしかなく、ボトルやラベルの高級感が大切となります。デザインの良し悪しも活発な意見が交わされました。

しかしここで総意となったのが、「デザインが良くても味が悪ければ買い続けることはできない。やはり、高いには理由があると納得できるそのバックストーリーを伝え続けることが何より大事。そして、飲食店スタッフの教育を丁寧にし、お客さんに勧めてもらう環境を作ること。」です。

梅酒バーを経営しているHAMさんがお客さんがまだ知らない商品を勧める時の方法について話してくれました。

「タイ人に梅酒を勧める時は、3銘柄をセットにして提供し、各梅酒が”チョーヤ”より甘い、酸っぱい、濃いなどと説明します。タイ人にとって梅酒=チョーヤですので、チョーヤであれば誰もが味を知っています。そのチョーヤを基準にして話をすると分かってもらいやすいんです。そして、3銘柄セットで試飲をしたお客さんの2杯目は、ほとんどがその3銘柄の中から選ばれます。」

タイでは黒霧島やいいちこが日本の焼酎の代名詞ですが、これらと比較して(基準にして)島の焼酎がどのように違うのか?そこから話すのも方法の一つだと感じました。競合銘柄を味方につけて焼酎の奥深さを知ってもらうわけですね。

色々な味を楽しめると知識も興味もさらに増える

日本酒に比べてタイでタイ人が口にできる焼酎の種類には限りがあります。知識を増やし、違いを理解し、「好き」に変えてくには焼酎を飲む体験がそもそもとても少ないのです。関税により高額となってしまう日本の酒類ですが、少量でも良いので複数種類楽しめる”効き酒”のような提供方法でお手頃に色々な焼酎が楽しめる場づくりが必要と感じました。

また、お酒はよく飲む方で焼酎も好きなGAPさんから印象的なコメントが。

「日本人はいつも日本酒を飲んでいるんだと思っていました。でも日本人の友人に聞いたら、”日本酒は毎日飲めないよ。飲むなら焼酎かな”と。それで初めて焼酎に興味を持ち、日本人と同じような飲み方をしたいなと思って飲んでいたら好きになりました。」

少し笑い話ですが、皆さんはタイ人が毎日トムヤムクンとグリーンカレーを食べていると思ったことはありませんか?そんなことはありません。本当にたまに、たまに日本人が食べたいと言うから夕食の席で出てくるくらいです。「日本人だから日本酒」と言う固定概念を崩されたGAPさんは「日本人がもっと他に普通に飲んでいる美味しいお酒があるようだ」と気がついたのです。

日本酒とは違う味わいや色々な飲み方を楽しめる日本の本格焼酎。タイ人の焼酎ファンを増やすにはまだまだハードルがたくさんありますが、直接話せたからこそお互いに腹落ちしたことがいくつもありました。得られた情報をこれからどのように活かしていくのか?難しいからこそのやりがいには、根気と情熱が必要です。

おまけ

実はこのあと、本事業の主催で「東京諸島ブランド商材PRイベント」が開催されました。ここにFGI参加の皆さんも合流!タイではなかなか飲めない焼酎の数々に大変盛り上がり、試飲程度の予定がボトルがしっかり空になるまで皆さん楽しまれました(笑)。

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執筆 mediator

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