セミナー開催レポート|「押さえておきたい」タイ現法における会計・税務の基本 - mediator

Blog セミナー開催レポート|「押さえておきたい」タイ現法における会計・税務の基本

2019年09月25日 (水)

講座・セミナー開催記録
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海外拠点での会計処理は、その国独特のルールや習慣があり、タイ語という言語の壁にも阻まれるため、駐在員が簡単に習得できるものではありません。今回の講座では、駐在員が押さえておくべきタイの会計・税務のポイントを習得します。駐在員が陥りやすい現地法人会計上のトラブルを過去の事例から分析し、その対応策、予防法について、J Glocal Accounting Co., Ltd.の坂田竜一氏より解説いただきました。

タイにおける会計人材を取り巻く環境

タイの教育制度は日本と同様の6(小)-3(中)-3(高)-4(大)で中学生までが義務教育の範囲です。日本と異なる点としては、飛び級制度があることや2学期制を採用していること、兵役免除のための授業があることなどが挙げられます。会計資格においては、CPD(Continuing Professional Development)とCPA(Certified Public Accountant)があり、CPCは原則大学学位保有者で会計を専攻し会計士協会に登録をすれば取得が可能です。資格維持のためにCPDでは年間12時間以上、CPAでは年間20時間以上の認定セミナーの受講が必須で、会社に勤めながら認定セミナーに通う方も多くいます。会社側はこうした経理スタッフの状況を鑑み、可能な範囲でサポートをしてあげると良いと思います。

経理スタッフを1名のみ採用したい場合には、マルチタスクの業務ができるかどうかや様々な仕事に携わる中小企業での勤務経験者がおすすめです。会計事務所を活用する際には、自社の経理スタッフには何の業務を依頼し、会計事務所にどこまでフォローしてもらうのかを明確にしましょう。

経理スタッフが急に退職してしまった場合などは、会計処理のフローや書類の管理がブラックボックス化しがちです。そうした状況ですと、新しい経理担当者を雇っても対応ができず、またすぐに辞めてしまうなど悪循環に陥ってしまいます。タイは慢性的な会計人材不足で、一時的に業務をサポートしてくれるような経理スタッフの派遣などもありません。日頃から会計業務の管理をきちんと整理しておくことをおすすめします。

また、日本本社からの要望もあり決算早期化が求められることもあるかと思いますが、そうした急な要望は会計現場の混乱を招きます。日本人駐在員の皆さんには、決算早期化の目的や狙いなどを明確にし、日本からの要望をそのまま経理に流さないよう、ワンクッション入っていただきたいと思っています。

支払いの際には必ずTAX INVOICEを

タイの付加価値税(VAT)の納付については、TAX INVOICEが重要となります。VATは、毎月会社が支払ったVAT(Input VAT)と受け取ったVAT(Output VAT)を相殺して、Output VATが多ければ納税、Input VATが多ければ還付となります。しかし、この相殺ルールを適用するには、原本のTAX INVOICEが揃っていなければなりません。

パパママストアなどの個人商店ではTAX INVOICEがもらえなかったり、飲食店のレシートではTAX INVOICEの代わりにはなりません。近年では、E-mail等でのコピーによるTAX INVOICEのやり取りも増え、手元に原本が揃わないこともあります。TAX INVOICEの表記はVAT登録者の情報が正確に記載されてなければならず、これを間違えても相殺ルールが適用されません。非常に煩雑な手間と感じるかもしれませんが、TAX INVOICEが揃っているかどうかは、日本人駐在員自身も十分に確認をすることと、経理スタッフにも徹底的に指示をしてください。

何がいくらまで経費になるのか?

会社経営をしている以上、支出はできるだけ経費として落としたいものです。日本人駐在員の気になる経費として「接待交際費」がありますが、タイの税法上、経費として認められる接待交際費は「売上か資本金のどちらか多い方の0.3%」と定められており、その金額はごくわずかしか認められていません。それを超えた分に関しては、法人税率20%の対象となります。

損金経費を増やすポイントとして、出張費の日当やガソリン代、制服などの支給品の他、個人所得税への課税があります。会社側としては、車で通勤している従業員に手当として定額の交通費を給料に上乗せし個人所得税への課税として損金算入経費扱いたいものですが、従業員側としては会社のために使っている車の経費なのに個人所得税が上がるというのは不満となります。

接待交際費など、経費として認められる金額がごくわずかにとどまるタイの税制には、給料格差が広く、富を持つ者が貧しい者に分け与える(目上の人が下の人に奢る)というタイの社会的背景が影響しているようにも感じます。

タイに来られた多くの日本人駐在員の皆さんは、これまで会計実務に携わられた経験は少なく、タイでの経理処理には戸惑うことが多いと思います。しかし、分からないからとタイ人の経理スタッフに任せきりになっていると、不正や横領、税務調査で思わぬ事態を招くなど、最終的に会社の不利益に繋がる可能性もないとも言い切れません。経理スタッフは、駐在員が使う経費の用途などもよく見ているものです。常日頃からきちんとコミュニケーションをとり、お互いの信頼関係を築けるように心がけていただきたいと思っています。

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執筆 mediator

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