タイ人と日本人の関係を幸福なものにしたい
日本人といっても、いろいろなんだ。
Table of Contents
駐在員といってもひとくくりにはできない。
タイを見下し、言葉は悪いけれど程度が低い人もたくさんいる。
その一方で、日本人に対して諦めの境地に達しているタイ人も多くいる。
タイ人と日本人との関係を幸福なものに変えていくには何が必要なのか。僕に何ができるのだろう。
僕が考えついたのが、タイ人について日本人に伝えていくことです。タイ人とは果たしてどういった思考回路で、どのような生き物なのか。
タイ人でありながら、日本で長く生活し、日本的価値観を身につけているからこそ、僕には日本人がタイ人のどこに不満を抱き、どこをじれったく思っているのかが手に取るようにわかります。
タイ人との関係にフラストレーションを抱えている日本人に向けて、僕は改めて「タイ人とはこういう人たちなんですよ」とセミナーで紹介をしていったのです。
「タイ人を知る」セミナーが生まれたきっかけ
ほとんどの日本人駐在員は3年~5年で帰国してしまいます。タイ人のことをまったく理解しないまま帰ってしまう人が大半です。
僕はそれが残念で仕方がない。せっかく縁があってタイに赴任したのです。タイ人のことをわからないまま帰ってほしくない。少しでも理解してもらい、両者のギャップ解消に貢献したいと考えました。タイを否定したままで駐在期間が終わり、帰国してしまうのはあまりにももったいないと思うのです。
駐在員はタイ人をマネジメントしなければなりません。価値観が違うタイ人とのやりとりにはストレスを感じることも多いでしょう。
でも、前編でもお話しましたが、タイ人の日本人に対する期待値は高いのです。もともとは日本人に対して非常に良いイメージを持っている。
期待値はまだ高値水準が続いています。がっかりしたり絶望したりすることもありますが、それでもいまだに日本人に期待し、日本人を尊敬している。
この期待値の高さに甘んじることなく、日本とタイとの違いを受け入れ、その違いを乗り越えてほしい。
この一念から実現したのが「タイ人を知る」というセミナーです。それまで僕が手掛けていたのは、タイへの進出や販路開拓に関するセミナーでした。タイでビジネスを行う上での初歩やノウハウを解説するという内容でした。
これらのセミナーも具体性に富んでいると好評でしたが、それよりも前に、まずタイ人を知ってもらうこと、タイという国を知ってもらうことが前提として必要ではないのか。それが、いまでは定番となった「タイ人を知る」というセミナーが生まれたきっかけです。
階級社会の側面についても知ってもらいたい
この「タイ人を知る」のセミナーでは、タイの階級社会の側面についても触れています。
階級についてはどう尋ねていいのか、どう考えていいのかわからないという日本人の方が多数派です。日本人からするとなかなか理解しづらい部分であることは、日本に長く住んだ僕にはよくわかります。
でも、これはまぎれもなくタイの現実です。タイ人を理解する上では階級社会に対する知識が欠かせません。だから僕は「タイ人を知るセミナー」でははっきりと階級社会についても言及しています。
オフィスのタイ人と工場で働くタイ人とはどう違うのかについても、率直に事実を伝えています。タイ人は階級をどのように見分けるのか。そんな話にも触れました。
ある意味、非常に微妙で繊細なテーマですが、ここにずばり切り込んだセミナーは過去になかったと思います。
水面下のタイを知るには
最近、タイにやってくる駐在員の年齢が若年化しています。これは素晴らしいことだと思います。せっかく若いのですから頭を柔軟に切り替えて、ぜひタイと接してもらいたい。
長くタイにいても、本当のタイ、水面下のタイをわかっていない人は残念ながら多いです。表面的なことしか知らない、知ろうともしない人をたくさん見てきました。
多くの駐在員の方の目に写っているタイは氷山の一角です。ほんの一部でしかありません。
かくいうタイ人の僕も、日本から戻ってきてからタイに慣れるまでに時間がかかりました。タイ人とのコミュニケーションにとまどう日本人の気持ちがよくわかるのです。
だからこそ、「タイ人を知る」のセミナーに力を入れています。また、「タイ人の価値観を知る」というセミナーではタイ人の本音を僕が代弁しています。
それもこれも、タイのことをもっと理解してもらいたいと考えるからです。これこそが僕のやるべきこと。天命だと思っています。
日本人のコミュニケーションは言葉以外のものに重きを置くハイコンテクスト。これはタイ人も同様です。
タイ人と日本人は違いもたくさんありますが、共通点だってたくさんある。ぜひ同じハイコンテクスト文化の中で育ったタイ人との理解を深めてほしい。
そのときに必須なのはお互いに敬意を払うこと。相手を尊重し、その上で僕のセミナーなどに参加してもらい(笑)、率直にタイ人と話をしてほしい。敬意を持って接してもらえればタイ人も敬意を持って応えます。ぜひ実践してみてください。