タイ企業のニーズを拾い上げろ! - mediator

Blog タイ企業のニーズを拾い上げろ!

2021年03月01日 (月)

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COVID-19の感染拡大を機に、様々なビジネスが変化し、mediator も進化したーー。その進化の過程を体感する中で、今回は商談会のカタチについてお話ししたいと思います。商談会をより実りある場にしていくための新しいアプローチについてご紹介します。

抱えている課題や欲しい技術をヒアリング

何か良い案はないか?
面白い提案をしてもらえないかな?

うれしいことに、こうした声をかけていただく機会が最近増えています。これまでの案件は、すでに最初から仕様がしっかり固まっていて、あとはどんどん進めるだけという仕事が多かったのですが、今は僕たちの方から、お客さんに「こんなプロジェクトを進めてみませんか」や「こんな商談会はいかがでしょう」と企画を提案できるようになりました。

せっかく主体的に新しい案件に関われるようになったのですから、これを機に、商談会を開く際のアプローチを変えようと思いました。バイヤーとして参加するタイの企業にあらかじめ「どんなモノがほしいのか」「何を求めて商談会に参加するのか」を詳しくヒアリングするようになったのです。

これまでの商談会は、出品する側の日本企業のカタログをどんどん作り、興味のありそうなタイの企業に配って商談会への参加を申し出てもらうスタイルでした。しかし、正直なところ、ビジネスマッチングの精度といえばいま一つ。ニーズが合わない、思うような製品が見つからないというケースが少なくありませんでした。

「タイと日本との架け橋」をうたいながらも、本当にタイの企業に満足してもらっているのだろうか、日本企業のタイ進出に貢献できているのだろうか。スタッフはそんな葛藤を抱えていました。

しかし、やり方を変えたことでひとつの緒(いとぐち)が見えてきました。

タイの企業に事前にヒアリングを行い、抱えている課題を把握し、その課題を解決するために必要なモノやサービス、技術は何かをリサーチした上で商談会を実施する方針に切り替えたからです。プロダクトアウト型からマーケットイン型に変えることで、ビジネスチャンスをつくりだすことに新しい光が見えてきました。

付加価値を高める機械が求められている

具体例を挙げてみましょう。

この2月、mediator では日本貿易振興機構(ジェトロ)が主体となって、タイの工業省や日本のFOOMA(一般社団法人 日本食品機械工業会)をつないで、食品加工機械の商談会(商談会の詳細はこちら)を運営しました。

この商談会でバイヤーを招聘するにあたり、僕たちはタイで上場しているいくつかの食品加工会社にアポイントを取り、現状の問題点や求めているソリューションについてヒアリングを行いました。提案を希望する製品、機械導入時のポイント、そして機械導入の狙い。これらについて話を聞き、その情報をまとめて日本側の企業に提供したのですが、ヒアリングの結果はいずれも非常に興味深いものでした。

例えば、ドリアンなどタイ産のフルーツを冷凍し輸出している会社からは、急速冷凍できる巨大な冷凍庫がほしい、という要望が飛び出しました。旬の時期に大量に収穫されたドリアンを丸ごと冷凍して保存し、輸出したいです。性能の良い冷凍庫や保存技術は日本企業の得意技の一つ。ヒアリング結果はレポートにまとめて日本企業に伝えることで逆提案をもらい、タイ企業に打診。その結果、いくつかの商談が実現しています。

バンコク中心部サイアムエリアに建つ皆さんもよくご存知の商業施設がありますが、この会社の本業がお米のメーカーであることはあまり知られていません。この会社では、現在日本の精米機を使っているそうですが、新たに品質向上に役立つ米の選別機と、省力化できる真空パックの袋詰機械、さらには製造ライン全体の省エネ化、生産ラインの効率向上に役立つ提案もほしいと具体的な要望が寄せられたのです。

タイ南部でエビの加工を行うメーカーでは、エビの選別や皮むき、背ワタ取りといった手作業の下処理を自動化できる機械や生産性を上げるための自動化システムの導入を検討していました。エビの下処理は難しい技術ですが、これらの工程を自動化できれば、人件費を削減でき、歩留まりも上がり、利益も向上するからです。

キャッサバから抽出したデンプンを輸出している会社では、キャッサバを乾燥させる工程で重量が減ってしまいうことに頭を抱えていました。わずかな数値の差で乾燥させすぎたキャッサバは売り物になりません。キャッサバを適度に乾燥させるには、乾燥の度合いを鋭く感知しコントロールできるセンサーを備えた機械が欠かせません。キャッサバの粉砕時に含水量を精密にコントロールできるシステムがあればーー。

タイにはたくさんの天然資源がありますが、付加価値を高めなければ価格競争に巻き込まれてしまいます。体力を消耗する価格競争を避け、付加価値を上げるため、これらの会社では日本製の機械とその活用ノウハウに活路を求めています。

商談会はお見合いと同じです。求めている人物像が明確であればあるほど成婚の確率は高まります。その意味で、今回、タイの企業がどのような工程でどんな機械や技術を求めているのかという「理想の人物像」が具体的にわかったことは大きな収穫でした。果たしてどれぐらい成婚率が高まるのか。楽しみでなりません。

本当の意味で「タイと日本の架け橋」となる商談会を

この商談会には、日本から30社が参加しています。医薬品の乾燥装置の大手である大河原製作所、計量器の大手メーカーであるイシダ、自動包装機ではトップシェアを誇る川島パッケージ、流体食品の大手プラントメーカーの岩井機械工業、精米機のトップメーカーのサタケなど、日本の優れた企業がたくさん参加しています。

要望の中身やニーズの内容が明確になり、さらに技術力のある会社が参加している。タイの企業が抱える課題に、必ずや最適なソリューションが提供されるはずです。

日本の優れた技術や機械を欲しているタイの企業は多いはず。今後も様々な分野においてタイの企業にヒアリングを行い、現状の問題点や日本企業に求めている内容を拾い上げて商談会に活かしていきたい。

メディエーターが目指しているのは、有益で実りの多い商談会。タイの企業にも日本の企業にも満足をしてもらえる商談会です。本当の意味で「タイと日本の架け橋」となる商談会を追求します!

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執筆 三田村 蕗子

ビジネス系の雑誌や書籍、Webメディアで活動中のフリーライター。タイをもう一つの拠点として、タイはじめとするASEANの日系企業や起業家への取材も手掛ける。新しい価値を創出するヒト、店、企業の取材が得意技。コロナ禍で絶たれたタイとの接点をどう復元するか模索中。

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