石油化学企業の最大手が求める、未来のエネルギーとは 〜PTT〜

石油化学企業の最大手が求める、未来のエネルギーとは 〜PTT〜

公開日 2021.07.29

TJRIプロジェクトの一環として行っているオンラインプログラム「Open Innovation Talk」の第2回ゲストは、タイ国内の時価総額No.1、石油化学業界最大手の「PTT Public Company Limited(PTT・タイ石油公社)」。

近年は特にEV事業に注目が集まっていますが、今回はPTTグループ横断でエンジニアリング戦略を担当し、PTT本体と関連会社のビジネスを監督する役割を担うポンティップ氏と、同グループがライフサイエンス分野に本格参入するために100%出資し設立した新会社「Innobic (Asia) Co., Ltd.」の副社長ナット氏に、それぞれの観点で今、日系企業に求めるもの・目指すものを尋ねました。

PTTは“川上から川下まで” 幅広くエネルギー事業を展開

ガンタトーン:
改めて、PTTグループが展開する事業をお伺いできますか?

ポンティップ氏:
我々は“川上から川下まで” すべてのエネルギーに関わるさまざまな事業を展開しています。事業の特徴としては大きく分けると3つあり、1つ目は川上の部分である、オイルガスを主としたE&P(Exploration & Product-ion)やLNG(液化天然ガス)、Coal(石炭)などを使ったエネルギー生産。2つ目は川下の部分としてはOil & Re-tail(小売向け事業)、Refineries(製油所)、Petrochemicals(石油化学製品)、Power(エネルギー開発)事業で、前述した資源の調達や小売向けの展開は子会社に任せています。

そして弊社自身としてはNatural Gas(天然ガス)、原油調達をはじめとするTrading(貿易)、Technology & Engineering(技術と工学)の開発に取り組んでいます。

ガンタトーン:
将来的なビジネスプランはどのようにお考えですか?

ポンティップ氏:
少子高齢化や経済発展、気候変動など世界は常に変化しています。そういった外的要因を受け、弊社では多岐に渡るイノベーションを検討しています。現在考えているものとしてはDemographic Shift(人口転換)、Rising Urbanization(都市化の進行)、Global Eco Power Shift(世界的なエコ電力へのシフト)、Climate Chan-ge(気候変動)、Technological Breakthrough(技術革新)という5つのカテゴリーに分けられます。また世界的な潮流としてクリーンエネルギーや代替エネルギー、サステナブルといった取り組みが注視されていますが、それは弊社も同様です。現状維持ではなく、常に時代を読んだ新しい事業を展開していきたいと考えています。

今、PTTが目指すもの・日系企業に求めているもの

ガンタトーン:
現在PTTとして描いている展望をお聞かせください。

ポンティップ氏:
前述しました将来的な4つの再生可能エネルギーに焦点を当てたとして、電気自動車や水素エネルギーを中心とした、物流・インフラ、ヘルス&ウェルネス、ロボネスといったフレームワークを持っています。すべての分野においてPTTが得意なわけではありません。さまざまな展開のパターンが考えられると想定しています。その中で実証実験を行い、具体化できたものから会社および事業設立ができればと考えています。

ガンタトーン:
なるほど。タイ政府は国内で生産している自動車の30%を、2030年までにEV化していきたいと考えていると伺いました。

ポンティップ氏:
その通りです。分野問わず、日本企業の協力・参画を求めているとのことです。具体的には、自動車部品から始まり、バッテリー、車やバスといった外装(得意ではない)、そしてEVをはじめとしたガソリン・電気ステーションといったインフラ(OR)は今後もさらに注力していきたいと考えています。同時に「Mobility Service Station」で総合的なプラットフォームを提供していく予定です。ただすべてを自社グループで賄えるとは思っていません。今後はグループ外に向けてパートナーシップを結んでいく予定ですし、自社で保持するファシリティ・キャリア・エナブラーといった総合的な物流事業を確立し、より効率的かつ高品質な物流を実現することで、次世代の「スマートシティ」に繋げていきたいと考えています。

コロナ禍で製薬ビジネスが動き出す

ガンタトーン:
ここからは、PTTの新事業として昨年立ち上がった「Innobic (Asia) Co., Ltd.」の副社長ナット氏にお話を伺っていきます。まず貴社の事業を教えていただけますか?

ナット氏:
弊社が柱とする事業は、製薬・医療・栄養(高機能食品)の3つです。まず製薬事業では、注射をタブレットにする簡易化の技術、また生活習慣病への対策、そして医療事業における医療機器と消耗品の開発も進めていて、近々遺伝子をベースにしたウイルス検査キットもローンチ予定です。3つ目の栄養(高機能食品)は、植物性タンパク質や乳酸菌・ステビアなど自然由来の高機能食品の開発を進めています。

ガンタトーン:
具体的に、日本企業に期待するものとは?

ナット氏:
よりパーソナライズに特化したもの、また医療診断のための手袋、現在マスク用の工場を自社で建設しているのですが、AIロボティックスやデジタライゼーションといった新たな技術を有するパートナーとの共同開発も積極的に進めています。合成肉事業では、英国発の「NRF」と共同で工場をタイで建設中です(ライセンスも英国由来)。将来的には牛や豚を殺さずに食物を作り出すことを目指しています。もし弊社と同じ志を掲げている日本企業がいましたら、ぜひご連絡ください。

ガンタトーン:
今回、PTTに興味を持った方は後日「提案会」という形で先方とお話をする機会を設けています。今後のビジネスに繋がる提案をお待ちしています!

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TJRI編集部

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