産官学の有識者が語る「日本から見たタイ、EECなどアセアンを比較した際のタイの優位性」|「Envisioning the Future:日タイ戦略的経済パートナーシップ」 レポート Vol.2 - mediator

Blog 産官学の有識者が語る「日本から見たタイ、EECなどアセアンを比較した際のタイの優位性」|「Envisioning the Future:日タイ戦略的経済パートナーシップ」 レポート Vol.2

2022年06月08日 (水)

販路開拓・進出
産官学の有識者が語る「日本から見たタイ、EECなどアセアンを比較した際のタイの優位性」|「Envisioning the Future:日タイ戦略的経済パートナーシップ」 レポート Vol.2のメイン画像

2021年7月21日にタイ国外務省と在タイ日本国大使館の共催で行われたオンラインセミナー「Envisioning the Future: 日タイ戦略的経済パートナーシップ」。mediator は本セミナーの企画から運営まで一気通貫の総合プロデュースと司会を務めました。

非常に多くの方々に関心を持っていただき、当日は約1000名の方に参加いただきました。その中でも産官学の有識者により、日タイの経済連携について4つのテーマで意見交換が行われたパネルディスカッション「What now & What next: Thailand-Japan Strategic Economic Partnership in Challenging Time」​​の内容を抜粋して全4回の連載でお届けします。

今回は、2番目のテーマ「日本から見たタイ、EECなどアセアンを比較した際のタイの優位性」について。テーマ1では、過去を振り返り、日本がタイにもたらしたバリューについて取り上げましたが、現在の日本はタイをどのように見ているのか、EECなどASEANと比較した際、タイの優位性はどのような点にあるのかを探ります。

日本とタイが手を取って中国のサプライチェーンに参入|亜細亜大学アジア研究所 大泉教授

テーマ2で最初に答えたのは亜細亜大学アジア研究所の大泉教授です。

「タイが日本にとって東南アジア最大のパートナーであることはこれからも変わりません。ただし、両国を取り巻く要因は変わってきているので、今後、検討していかなければならない点があります。一つは、集積地としてのメリットを活かすこと。もう一つは、中国経済に対して、タイにある日本の集積地を活用することです。

2010年に日本の経済規模は中国に抜かれました。中国の経済はすでに日本の3倍の規模に達しています。米中対立など不透明な要素はありますが、これからの経済発展を考える上で中国をはずすことはできません。日本は中国に食い込んでいく必要があるのです。そのためにタイにある集積地を活かすべきというのが私の主張です。

日系企業の本社を回ると、国際部が中国担当とASEAN担当に分かれていますが、この壁はもう取り払ってしまってはどうでしょうか。アジアを一つの市場、一つの生産拠点と考え、外にある集積地をどう使うのかを考えていくべきです。

中国はこれまで日本のサプライチェーンに入り込むためにずいぶん苦労をしてきましたが、今度はその逆。日本とタイが手を取って、中国に入り込む道筋を考え、中国が世界に広げているサプライチェーンに食い込むのです。そのためにはタイにある日系企業の中に中国語のできる人材を置くことを提案します。」

在タイの日系企業が中国語のできる人材を登用し、中国のサプライチェーンに積極的に入り込んで新たな経済成長を目指す。斬新な主張が飛び出しました。

政府の実行力の必要性|三菱自動車(タイランド)一寸木会長

続いて登場したのは、三菱自動車の一寸木会長です。タイに製造拠点を置いている「価値」や、タイ政府の施策についてこう評しました。

「自動車産業においては、タイはASEANの中でもっとも高度なサプライチェーンが確立している国です。人材もインフラも、そして金融についても安定しています。民間の声をしっかりと聞いて、タイ政府が産業政策を行ってきたからでしょう。 一方で労務費が上がり、バーツ高も進んでいます。インドネシアとの競争に関しては、もっと適切な対策を取ってほしいと思います。マーケットの声を政策に反映し、一貫性のある施策を望みたいですね。」

政府の実行力の必要性が一寸木氏の回答によってより鮮明になりました。

整備されたビジネス環境が魅力|スパイバー(タイランド)森田社長

このテーマで最後に登壇したのはスパイバーの森田社長。生産拠点としてタイを選んだ理由を率直に語りました。

「タイを選んだのは発酵生産の主原料である糖類が豊富に取得できる場所だからです。加えて、タイには日本企業が前から進出していて、その蓄積があります。親日国であり、ビジネス環境が整っている点もアドバンテージです。私たちも享受していますが、税制優遇などBOIの恩典制度は非常に魅力的でした。」

工業団地やサプライチェーンといったファクターに重きを置く自動車や電気部品産業とは異なり、スパイバーは原料や環境を重視しているというのは、非常に新しい視点でした。

今後はスパイバーのような視点でタイを評価し、進出する企業が増えてくるかもしれません。

続きはこちら >>> レポート Vol.3

開催概要

開催日:2021年7月21日(水)
アジェンダ:
1. Opening Speech
外務省事務次官 ターニー・トーンパクディー 氏
2. Keynote Speech 「ポストCOVID-19時代における日タイの連携の方向性について」
タイ国副首相兼外務大臣 ドーン・ポラマットウィナイ 氏
3. Special Lecture 「日タイの協力の新しいステージに向けて」
日本大使館 駐タイ特命全権大使 梨田 和也 氏
4. Panel Discussion 「現在と未来:競争時代における日タイの戦略的経済連携について」
パネリスト
① シハサック・プアンゲッゲオ 氏|EEC 事務局 特別顧問/元タイ王国外務次官/元駐日タイ王国大使館特命全権大使
② チラパン・ウンラパトーン 氏|タイ工業連盟(FTI)日本産業協力機構(TJIC)会長
③ アーリー・チャワリッシーウィンクン 氏|セメンタイホールディング(PCL)代表取締役社長
④ 萬木 慶子 氏|新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)アジア地域総代表バンコク事務所長
⑤ 大泉 啓一郎 氏|亜細亜大学アジア研究所 教授
⑥ 一寸木 守一 氏|三菱自動車(タイランド)会長
⑦ 森田 啓介 氏|スパイバー(タイランド)代表取締役

▼プレスリリースはこちら▼
https://mediator.co.th/mofa-envisioning-the-future/

▼全編の動画はこちら▼
https://youtu.be/vgyQ4BS3PxM

▼全編を記録したebookはこちら▼
https://www.mfa.go.th/

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執筆 mediator

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