オンライン国際シンポジウム「文化と外交II」|文化外交の役割を経済的視点で考察 - mediator

Blog オンライン国際シンポジウム「文化と外交II」|文化外交の役割を経済的視点で考察

2022年03月03日 (木)

販路開拓・進出
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2022年1月19日(水)に、国際交流基金設立50年を記念して、国際交流基金バンコク日本文化センター​​主催のオンライン国際シンポジウム”「文化と外交II」:公的機関の役割と文化交流を再考する”が開催されました。本シンポジウムでは、跡見学園女子大学文学部の小川忠​​教授に「国際交流基金の対アジア交流において、半世紀の歩みと課題」について解説いただいた後、パネルディスカッションで、国際文化交流の果たしうる役割を​について、学術部門からタマサート大学政治学部のキティ・プラサートスック​​教授、民間部門からmediator 代表のガンタトーンがパネリストとして参加しました。

こんにちは、mediator 代表のガンタトーンです。​​今回は、本シンポジウムの内容をふまえ、主に経済的な視点から世界における「Made in JAPAN」の位置付けと「文化と外交」の今後の展開について、考察していきたいと思います。

日本・アジア文化交流の課題 〜 タイにおける日本の存在感の変化

一般的なタイ人の日本に対する印象について述べると、いわゆるベビーブーマー世代とX世代の人々は、日本の影響を非常に受けていると言えます。その時代にはタイでは今ほどものが溢れておらず、文化を含め輸入品といえば日本製でした。しかし、時代とともに韓国や中国、欧米など世界中のものや情報がタイに多く溢れるようになったため、Y・Z世代にとって日本の存在感は薄くなってきています。

ICTのグローバル化が進んだ21世紀において、日本が今後文化外交を進めるには、その国の人々がコンテンツとして日本のどんなものを消費し、求めているかを調査して意識して発信していく必要があるでしょう。

本シンポジウムの小川教授の講演によると、日本語を学ぶ外国人の数は1979年の12万人から2018年には30倍の385万人に増えているというデータの紹介がありましたが、果たしてその他の言語(中国語や韓国語など)を学ぶ外国人はどうなのでしょうか。グローバル化が進む今、日本語に限らず外国語学習者は増えていることは予想され、その数字と比べてみる必要があるかもしれません。

外国語として日本語を学ぶ人の多くは、アニメや映画、ドラマ、日本への旅行など、いわゆる文化的側面の興味がきっかけとなります。しかし、日本語を学んだタイ人が、タイで日本語を活かした仕事に就こうとしたら製造業がほとんどです。実際に日本人と仕事をしてみると、今まで興味を持っていた日本の文化的側面とはギャップが大きくあり、こんなはずではなかったという人も多くいるのが現実です。

それでは、このギャップを回避するためには、どうしたらよいのでしょうか。人材育成の際に、言語だけでなく日本の商習慣や日本人の働き方などを学生のうちにもっとインプットしていくことが重要です。

日本の文化外交の可能性は?

日本が文化外交を進めていくには、日本がどうフォーカスしていくべきか、選択と集中が必要となります。

マーケット用語でプロダクトアウト、マーケットインという言葉がありますが、文化においてもこれは必要になってくると考えています。日本文化に馴染みがない地域柄だから展開しにくいということではなく、生活が豊かになるなど、そのメリットはなんなのか考えていくことも重要です。持続的に日本ファンを増やすためには、このように文化と経済を融合させる視点を考えていくことが鍵となるでしょう。

例えば、韓国は、人口わずか5,000万人ほどの小さな国ですが、経済の立て直しは戦略的で見事です。KPIが非常に明確で、ソフトパワーを駆使して世界的にも一大コンテンツ産業国として成功した国です。近年の韓国のポップカルチャーは、カラーやダンスなどその特徴が非常にわかりやすいです。これは、緻密な計画とICTをうまく活用した情報発信の賜物と言えます。

経済的視点でのカルチュラル・ディプロマシー(文化的外交)の活用法

文化と一口に言っても伝統文化と近代文化(いわゆるポップカルチャー)がありますが、「文化 × 経済」という観点で言うと、近代文化の活用が有用と言えます。伝統的な文化、つまり着物を着たり、お茶を立てたりなどは毎日できません。しかし、音楽を聴いたり、映画を観ることは毎日できます。

タイ人はユニクロや無印良品のお店にウインドウショッピングによく行きます。これは、日本が好きだから行っているのではなく、単純にその世界観が好きだから。経済でいうところの無国籍です。こうした点をふまえて、もっと戦略的に発信していくことができれば、カルチュラル・ディプロマシーはそれほど難しいものではなく、今後も日本文化の発信をしていくことができると信じています。

「Made in JAPAN」の立て直し

日本はこれまですでにあるコンテンツを海外に売り込むスタイルでした。ICTが発達していなかった2000年頃まではそれでも十分に売れる時代でした。しかし、今は誰もがスマートフォンを持ち、世界中の情報を簡単に手に入れられる時代です。

これからの時代は、海外にもっと目を向けたコンテンツを作っていく必要があるのではないでしょうか。情報が溢れている現代において、世界市場でインパクトを作っていく、日本文化を世界に根付かせ、「Made in JAPAN」を世界に広めるには、出来上がったコンテンツを売るのではなく、いかに発信してファンになってもらうか、より戦略的な計画が必要不可欠です。

韓国ドラマが放映された後、インスタントラーメンが爆発的に売れたということがありました。これは、偶然なのでしょうか。僕は意図的な発信だと思っています。このようなエンタメ × 食品など業界の垣根を超えた戦略的な連携は今後ますます必要になってくるでしょう。

日本もこうした成功例に倣って、日本のドラマが放送されたら日本車が売れるなど、マスタープランを持って「Made in JAPAN」を発信していくとよいのではないでしょうか。これは、いち民間企業が単独で進められるものではありません。個々の影響力は小さくても民間や政府などの各セクターが垣根を超えて一致団結して進めていくことで、その力は計り知れないものになるでしょう。

この時、人類の共通目標であり、世界の関心事であるSDGsもキーワードとなります。少子高齢化、多文化主義、地球環境問題、災害復興などこれら人類の共通課題を含めたコンテンツを国のKPIとして官民が連携して作っていく、さらに文化にも応用していくと共感が得られ、ひいては日本のプレゼンスも高まっていくのではないかと思っています。

開催概要

オンライン国際シンポジウム「文化と外交II」:公的機関の役割と文化交流を再考する
開催日:2022年1月19日(水)
アジェンダ
– オープニング
– 講演「国際交流基金の対アジア交流:半世紀の歩みと課題」
– パネルディスカッション「国際文化交流の果たしうる役割を再考する」
– 質疑応答
– 閉会
スピーカー
小川 忠 氏|跡見学園女子大学文学部教授
パネリスト
キティ・プラサートスック 氏|タマサート大学政治学部教授
ガンタトーン・ワンナワス 氏|株式会社メディエーター代表取締役社長
モデレーター
ルンティップ・チョートナパライ 氏

※本シンポジウムの詳細はこちら

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執筆 mediator

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